近年、聴覚は能動的な環境把握システムの一環として考えられるようになり、Marrによる
視覚の計算理論のような聴覚の計算理論の構築が試みられている。
しかし、聴覚の生理学的・心理学的知見は視覚のそれと比較して少ないため、構築の方向
性が定まっていなかった。
これに対し、BregmanはAuditory Scene Analysisの考え方を提唱し、計算理論の構築への
一方向性を示している。
Marr流の聴覚の計算理論を構築できれば、聴覚系がどのような処理過程で音を分凝するの
か明らかにできる。
更に、雑音中の特定の音を効きとるという点でカクテルパーティー効果のモデル化も可能
となる。
本研究では、この第一歩として、Marrが示した3段階の情報表現中の情報抽出のみに限定
し、単耳に到来した音響信号の表現に関する計算理論の構築を目的とする。
特に、ここでは物理量を位相とスペクトルに限定し、基底膜上の内有毛細胞による情報抽
出の計算理論を構築することで、2波形分離の問題解決を目指す。
Masashi Unoki(unoki@jaist.ac.jp) Apr 14, 1995