本論文では,共変調マスキング解除(CMR)の計算モデルを提案する.このモデ
ルは,著者らが提案した二波形分離モデル(モデルA)とマスキングのパワース
ペクトルモデル(モデルB)の二つのモデル,及び,二つのモデルの処理結果を
選択する選択処理部で構成される.モデルAでは聴覚フィルタ群の出力を,モデ
ルBでは単一の聴覚フィルタの出力を利用して,マスクされた信号から純音を分
離抽出する.選択処理部では,この二つの分離抽出された純音からマスキングし
きい値の低い方の純音を選択する.本モデルに対し、HallらによるCMRの実験を
想定したシミュレーションを行った結果,分離抽出された純音のマスキングしき
い値の変化は,Hallらが示したCMRの結果と類似する傾向が示された.また,こ
のときの共変調マスキング解除量は最大約8 dBであった.
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