本論文では、聴覚の情景解析に基づいた音源分離のモデル化の試みとして、二波
形分離問題を取り上げ、雑音が付加された信号から望みの信号を分離抽出する方
法を提案する。
ここで議論する二波形分離問題は、観測された混合信号から元の二波形を求める
不良設定の逆問題であるため、一意に解くためには制約条件が必要である。
本方法では、信号の特徴として分析フィルタ群を通過した混合信号の瞬時振幅と
瞬時位相を利用し、Bregmanによって提唱された四つの発見的規則を制約条件と
して利用することで、望みの信号の瞬時振幅と瞬時位相を一意に求める。
計算機シミュレーションの結果、本方法を利用することで、雑音中から実音声
(単母音と連続母音)を波形レベルにおいて高い精度で分離抽出できることが示
された。
また、本方法で利用する制約条件のいくつかを順番に省略した場合の分離精度を
比較検討した結果、四つの発見的規則をすべて利用することの有効性が示された。
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