著者らはこれまでに,Bregmanによって提唱された四つの発見的規則を利用する
ことで,AM調波複合音を分離抽出する二波形分離問題の解法を提案した.しかし,
この解法では,基本周波数が一定であり,その値が既知であるという仮定があっ
た.本論文では,この解法に,河原によって提案されたTEMPOによる基本周波数
の抽出と抽出された基本周波数の時間変化に制約を設けることで,雑音が付加さ
れた調波複合音から望みの調波複合音を分離抽出する方法を提案する.この方法
の有効性を示すために,(a)雑音が付加されたAM調波複合音,(b)AM調波複合音同
士,(c)雑音が付加された合成母音の三つの信号を用いてシミュレーションを行
なった.この結果,本モデルが,SD値で約15 dB程度の雑音除去を可能とし,雑
音が付加された調波複合音を分離抽出することができることが示された.
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