本論文では,音源分離のモデル化の試みとして2波形分離問題を取り上げ,雑音
が付加された波形から原信号と雑音を分離,抽出する方法を提案する.この方法
は,聴覚の情景解析に基づくものであり,wavelet分析合成系の各フィルタ出力
から得られる振幅包絡と出力位相,入力信号間の位相を用いることで2波形分離
を可能にする.この3つの物理的手がかりは,Bregmanが示した共変調マスキン
グ解除と漸近的変化に関する発見的規則を物理的制約条件として用いることで導
出される.この方法を用いた分離例として,帯域雑音中に純音が混入した2波形
分離問題の解法を示す.特に,振幅変調された雑音が混合された場合,分離が容
易になり,ランダム帯域雑音の場合,分離が困難になるという,共変調マスキン
グ解除の工学的な説明として解釈できる結果が得られた.
キーワード:
共変調マスキング解除(CMR),2波形分離,Gammatone filter,wavelet分析合成
系,聴覚の情景解析
|