二つの台風
「台風について,どんな質問でもしてください」と子供たちに訊ねた。
・「アメリカやアフリカに台風はあるのですか?」
・「台風の最後はどうなるのですか?」など出ましたが,
「二つの台風が出会うと,どうなるのですか?」
という質問が出た。
素晴らしい質問です。日本付近に二つの台風があることは起こることがあります。
考えてみよう。
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二つの台風が合体して大きな台風になるのだろうか,
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お互いに避けて遠ざかっていくのだろうか,
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お互いに打ち消し合って弱くなっていくのだろうか,
こんなことが予想されます。
ところで,今迄あった台風の中で,合体する例は稀です。
その場合,一方の台風が小さいときです。大きい台風に合体します。
それ以外の場合は,決まった一つだけの振舞いをしません。
といって,ばらばらでもありません。
藤原咲平(第5代中央気象台台長)は,
今迄の二つの台風が1000q以内に近くにあるとき,
お互いの振舞いを6つの場合に分けました。これを「藤原の効果」といいます。
二つの台風が発生した時,「藤原の効果」で進路予想をしようと考えます。
しかし,時間がたつと6つある場合の間でも入れ変わることがあります。
すると,予想が違ってきます。
つまり,二つの台風は,お互いだけでなく周囲のようすによって変わってくるのです。
二つの台風が行き過ぎた後に6つの場合のうち,これに近いということになります。
これでは進路予想はできませんね。
現在,台風を含む気象予報はどうなっているのでしょう。予報にはAIを使います。
従って,気象庁が用いる言葉に「藤原の効果」は使われません。
くわしくいえば,藤原の効果を示す二つの台風と周囲のようすに関係したデータは,
すべてスーパーコンピューターに入れてあります。
すると,人間が考えることでないように思えますね。
ところが,コンピューターは過去のデータをもとに,予想するのですから,
過去のデータに「藤原の効果」に関係するデータも入っています。
従って,「藤原の効果」が全く関係しない予想はないことなります。