【導入】
6年生の理科の最初に,「物の燃え方と空気」があります。
物はロウソクを使いますが,物が燃えることを考えると,
意外と奥が深いことがあります。
ファラデーの「ロウソクの科学」という本があります。
この本を多くの人が小さい頃に読むでしょう。
内容は深いのですが,やさしく書かれています。
最近,ノーベル賞を受賞した大隅良典先生が科学を志したきっかけは、
兄からもらった自然科学の本の一冊に「ロウソクの科学《があります。
【なぜ】
一本のロウソクに火をつけて燃やすとき,
その明かりを見て,どのように考えますか。
紙なら燃えるのが速いのに,なぜロウソクはゆっくりと燃えるのでしょうか。
この疑問の中に,燃え方の観察,炎の温度,燃える時の気体の流れがあります。
6年生の理科では,燃え方と空気の関係が「問題」です。
(問題と課題の違い: ,問題は問いかけ,課題は与えられたもの)
なお,小学校の理科には「ロウソクの科学《の内容は出てきません。
【一般論】
ところで一般に,燃え方とは,燃えるようすや,
燃え続けるためのくわしい流れを意味しています。
逆に,燃え続けない,すなわち,消えることから考えて,
燃えるための必要条件の一つに空気(酸素)の供給があります。
他にも燃焼のための必要条件があるでしょうか。
燃焼の3条件(燃焼物の存在,酸素の持続的な供給,
燃焼温度の維持)というのがあります。この条件は中学で学びます。
さらに深いところには,燃焼の機構や燃焼温度に関する,
深い考察もあります。小学校の理科を発展させることができるでしょうか。
小学校理科では,
「燃え続けるためには,新しい空気が必要」ということは出てきますね。
それだけで単元を終わりますか。よく観察すると面白いことを発見します。
【問題提起】
口が開いているとき,ガラス瓶の中のロウソクの火は燃え続けます。
半分以上口をふさぐとゆっくりと消えます。なぜでしょうか。
下に空気が入る口があっても火は消えます。なぜでしょうか。
口があいているのが上と下では,結果がなぜ違うのでしょうか。
【発展問題】
ここに,面白い実験があります。
高さの違うロウソクにそれぞれ火をつけて,ガラス容器で密閉します。
どちらが先に消えるでしょうか。
参照:考えるカラス#1: 蒼井優の考える練習
https://www.nhk.or.jp/rika/karasu/
予想1: ロウソクが燃えると二酸化炭素が多くなる。
二酸化炭素は空気よりも重いので,下の方から消える。
予想2: 温められた空気が上からおりてきてロウソクを温めるので,
上のロウソクの温度が高くなり,よく燃えるので,下の方から消える。
予想3: 燃えると二酸化炭素がガラス容器の中にだんだん増えてくるので,
ほとんど同時に消える。
予想4: 燃えた後の二酸化炭素が上からおりてくるので,
上の方から消える。
ここで,考えるために参考となることをあげておきます。
でも,難しいこととわかったら,考える基礎へいきましょう。
参考1: 密度の表 (基準,0℃,1気圧)
気体の種類 |
密度(kg/m3) |
空気 |
1.2929 |
二酸化炭素 |
1.9769 |
酸素 |
1.4290 |
ちっ素 |
1.2506 |
参考2: 気体の状態方程式 PV=nRT?
P=1気圧,n=モル(分子の数に相当),R=気体定数 これらはどの種類でも同じ。
密度n/V ∝ 1/T すなわち,気体の密度は温度に反比例する。
【考える基礎】
4年生のとき,温められた空気は軽いということを学びました。
これは基礎となる大切なことです。
どれぐらい軽くなるでしょうか。(これは小学生の範囲外)
計算すると,およそ,100℃で25%,200℃で40%軽くなります。
何と,300℃では50%軽くなります。
実際に,測った結果,燃えているロウソクの火の温度を下図に示します。
結果として,ロウソクの炎で600℃以上に温められた空気や二酸化炭素は,
軽くなり,密閉したガラス容器の上の方に集まります。
酸素は燃えるために使われますので,ガラス容器の中の上の方では少なくなります。
それでは,実験の動画を見ましょう。
実験の動画 ←ここをクリック
?
わかりましたね。
この答えは,炎は上から順に消えます。
皆さん,如何でしたか。結果を見てから,理由を考えるのではなく,
自分の考えた理由と結論を言ってから,実験を{やって}みるようにしましょう。
実験結果と予想が違っていた時にこそ,驚きがあり,理科の基礎が分かります。
「予想する」ことは「想像する」ことです。
「もし,‥‥‥なら,‥‥になるはずだ」と想像します。
いくつも,「もし」がでてくるかもしれません。一つずつ解いていきましょう。
【分かった考え方】
答えの〇×よりも道筋(みちすじ)が大切です。
道筋が正しければ答えは自動的に出てきますね。
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2019.4.21 作成