酸・アルカリ水溶液の濃度調製

強酸,強アルカリの水溶液を調製する際,元の薬品の濃度を低くします。
そのために,水で薄めます。しかし,何倍に薄めればよいか,
水を何mL加えればよいのか,この操作は明らかにして必要があります。

実験に使う,塩酸とアンモニア水の希釈(薄めること)について,
考えてみましょう。
溶液の濃度は重量%とモル濃度の表現があります。
通常,希釈するときのことを考慮して,
モル濃度をよく使います。ところが,モル濃度は体積を使うので,
温度に依存します。したがって,20℃を標準とします。
お互いに変換できますが,そのためには溶液密度が必要になります。

つまり, 重量% ⇔ (密度) ⇔ モル濃度

ここで,一般式を作っておきます。




 

のように, 2次または1次関数として記述できます。
f(x)を求める作業が必要となります。

このために,重量%と密度の関係を求めます。
この数値は理科年表 p.392 (2018年版,第91冊)から求めることができます。

この数値表を使って,関係式を求めるには,Excelを使います。

  1. 塩酸とアンモニア水に関して,それぞれ,Excelに代入します。
  2. これらの表を横軸:重量%,縦軸:密度 でプロットします。
  3. 計算式に入れて,対応濃度を求めます。

1-3の作業はExcelによる数値解析をすると,希釈操作が容易になります。
なお,重量%からモル濃度を求めるのは式に重量%(x)を代入すればよいが,
モル濃度から重量%を求めるには2次や3次方程式の根を求めることになります。
これにExcelの中のソルバーを使います。
ソルバーの使い方は,
http://www.geisya.or.jp/~mwm48961/statistics/solver1.htm などをご参考ください。

具体的に,
塩酸の場合,重量%と密度の関係グラフは

標準偏差をできるだけ1に近い,低次方程式にすると1次方程式となり

y=0.005x+0.9977 となった。ただし, x:重量%, y:密度

これらから,モル濃度と重量%の関係を表として記載できる。

重量%
密度
モル濃度
1.000 1.003 0.275
3.594 1.016 1.000
7.067 1.033 2.000
10.430 1.050 3.000
13.694 1.066 4.000
16.866 1.082 5.000
19.955 1.097 6.000
22.966 1.113 7.000
25.904 1.127 8.000
28.776 1.142 9.000
31.585 1.156 10.000
34.335 1.169 11.000
37.029 1.183 12.000
39.672 1.196 13.000

同様に,アンモニア水についても
標準偏差が1に近い近似式は
y=0.00002x^2-0.0042x+0.9978 を利用できます。

重量%
計算密度 g/mL
モル濃度
1 0.994 0.584
1.71604 0.991 1
3.45697 0.984 2
5.22322 0.976 3
7.01521 0.969 4
8.83337 0.962 5
10.67804 0.955 6
12.54957 0.948 7
14.44821 0.941 8
16.37432 0.934 9
18.32804 0.928 10
20.30954 0.921 11
22.31891 0.914 12
24.35614 0.907 13
26.42118 0.901 14
28.51384 0.894 15
30.63386 0.888 16