タンポポのくき
小学3年生の理科では,ホウセンカを育てることが春には単元として出てくる。
また,ホウセンカは6年生でも春から夏にかけて登場する。
そのときには,道管や光合成について調べる材料となる。
従って,鉢植えのホウセンカは理科の植物に必須教材である。
植物の代表であるホウセンカを掘り起こして観察すると,
意外と基本器官がはっきりしていて学習に役立つ。
例えば,3年生において,葉,茎,根の三つを区別することが出てくる。
これは一見簡単なように思える。葉や根は見た目にすぐ判る。
しかし,茎は根の上の部分であるが,先が分からない。
本葉(ほんよう,子葉に対する言葉)が付いている器官であるから
先端部の葉を見つけると判断できる。
ここで,問題が出てくる。ホウセンカを基準にしたときに,
一般的にこれを比較適用できるのだろうか。
もし,先端に花が咲いていた時に,花も茎というのだろうか。
この問題は現場の先生から出てきた。
すなわち,担当の先生の質問は下記のようであった。
① タンポポの茎はあるのですか?
② ハスのように地下をはうものも茎ですか?
葉と茎,根と茎。これらの境目の判定が問題となる。
タンポポを取り上げてみよう。
地上に見えるのは花と花の茎(花茎)と葉が目に付く。
花や花茎は時期が過ぎるとなくなるが,葉は残っている。
それらが付いているのが茎になるはずであろう。
すると,5mmほどの茎を見出すことができる。
調べてみると,JSTのページに
http://sciencewindow.jst.go.jp/html/sw13/sr-experiment
タンポポの茎は下図のように紹介されている。
タンポポのように地面にバラの花のように拡がる植物をロゼット型植物という。
他にもオオバコやシロイロナズナなどがある。
これで解決したと思えたが,日本植物生理学会の「みんなのひろば」では,
「葉のついている器官を茎」と定義すると,花は葉の変形ですので,
花茎は葉が付いている部分なので茎になるとされています。
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1050
さくらんぼの軸は「花柄」といい,枝ではありません。
「花茎」というから「茎」だというのも違和感がありますね。
しかし,茎は葉や根でない部分という定義からすると,
花茎は茎に属します。確かにタンポポの花茎は緑色していても
葉ではありません。
2番目の問題は地下茎です。
中学入試にジャガイモとサツマイモが出て,どちらも根ですかという質問です。
二つの芋を見ると,ジャガイモはつるっとしていて,サツマイモは毛のような根があります。
掘り起こしてみるとジャガイモは芋となっているもの以外に根があります。
ところが,サツマイモはどれも根が膨れ上がったような姿をしています。
つまり,ジャガイモは茎(地下茎)であり,サツマイモは根(主根)です。
地上に出たジャガイモは緑色に表面がなりますが,サツマイモはそのままです。
植物の茎は緑色になることがありますが,根はならないことはよく見られることですね。
視覚的な形態観察と器官からの定義とは必ずしも一致しないことは往々にあることです。
しかし,小学生に定義から器官名を教えることは良いかどうかわかりません。
定義に合う判別の仕方を教えておくことは大切と考えています。
平成29年7月16日 記