倒立振子を用いた意図推定

動作の裏に隠れた意図を推定する能力は模倣の基礎と考えられます.子供は大人の失敗した動作からでも隠れた真の意図を推定できることが経験的に示されています.この心理実験に着想をえて,伝統的な制御課題,倒立振子課題を用いた意図推定の数値実験を行いました.ここでは,「意図」を運動の計画すなわち制御とします.この数値実験では,可動域制限あり/なし2種類の振り子を用い,成功条件(学習時あり → 実演時あり)と失敗条件(学習時なし → 実演時あり),これら2つのよく似た実演動作の裏にある意図(制御)の違いを分類できるかを検討しました.その結果,力学系の「次元」を分類器の特徴とした場合には,振り子の知識をほとんど使わないにもかかわらず,振り子の知識を十分に使う力学的エネルギーを特徴とした場合に匹敵する分類成績を達成できました.この結果は,子供が大人の意図を読み取る実験結果のように,観察対象に関して少ない知識しかもたない場合でも,その動作データから動作に隠れた意図(制御)の違いを分類できることを示唆します.

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