第36回人工知能学会全国大会(2022年6月)で,オーガナイズドセッションを開催しました.
セッション名: 「知識・学習の転移可能性~ヒトとAI~」
内容:人間は未知な問題に対しても既存の問題の知識を転用して対処できる場合が少なからずある.こうした現象は,認知科学・心理学では「知識の転移」と呼ばれる.人間は日々直面する多様な問題に対して白紙から学習するとは考えにくい.既存の問題の知識を転移することは,欠点もあるが,学習の促進・効率化や,経験の不足を補うなどの正の効果を期待できる.近年では人工知能の分野でも「転移学習」「領域適応」「メタ学習」などのキーワードの下で,異なる問題領域のデータや学習内容を,標的の問題を解くために活用する技法が多様に研究されている.深層学習では学習データの不足が学習不能に直結しうる.そこで「転移学習」の研究動機のひとつは学習データの不足,いわば “刺激の貧困”の克服にある.こうした人工知能の研究の問題や実践は,知識の転移に関する認知科学の観点からも興味深い.本オーガナイズドセッション(OS)では,広義の「知識の転移」に関する人工知能・認知科学の独自研究や分野解説を募集する.現時点では知識の転移に関しては機械よりも人間のほうが優るだろう.しかし,その認知メカニズムはまだまだ解明されていない.本OSを人工知能研究者と認知科学研究者の交流の場としたい.