表面でのみ実現される新物性の研究
固体表面の上にゆっくりと別の物質を蒸着していくとします。多くの 場合、蒸着されていく物質はその厚さによって性質を変えていきます。 その性質の変化は1原子層あるいは、それ以下の膜厚領域で特に顕著に変化します。 また、表面上でのその物質の原子の並び方によってもその 物質の膜の性質は変わります。下の図の実線は超高真空中で表面をきれいにした GaAs(001)面の上にアルカリ元素のCsを蒸着していった時の光第二高調波 (SH)光強度の変化です。図の横軸はCsの蒸着時間でおよそ8分で1原子層 堆積します。この図をみると4分まではあまりSH光強度は強くありませんが、 4分をすぎると急激にSH光強度があがります。光第二高調波発生(SHG)の 強度は金属表面で強い事がわかっていますので、このことよりGaAs(001)上のCs は、表面を半分覆った段階では絶縁体だが全部覆うと金属になることがわか りました。
(講座発表論文Yamauchi et al.参照)
これらのことは、次のことを意味します。いま、この世界にはたくさんの元素 があり、それらの化合物などをあわせると、すごい数の物質が存在します。 それらすべてが、表面に乗るとまた違う物性を示す、すなわち同じ数だけ、 または基板の種類も考えるとその何倍も多くの新しい物性が、まだ 存在するということです。そのなかにはつまらないものもあるでしょうが、 とてつもなく面白い物もあるに違いありません。表面のみで実現される物性も あるにちがいありません。私達は非線形光学的性質という立場から、 この表面の新物質の探索を行なっています。今現在は、表面の 金属超薄膜の探査を行なっています。