東京や畿内は,非常に公共交通機関が発達している.頻度も非常に高いので,時刻表なんか気にすることなく駅に行けば,ほとんど待たずに乗りたいモノに乗れてしまう.夜もそこそこ遅くまで動いている.とにかく町中の用事だと,よほど大きな荷物でもない限り車で行こうという気にならない.酒も帰りのことを気にすることなく気楽に飲める.だからどこに行くにも公共交通機関の利用を前提にまず考えるし,逆に住まいを決めるにも,公共交通の便を考える.それが日本的常識と思ってました.
ところが,こっちに移るにあたって家探しをしているとき,不動産屋さんに「あとあと売るときのことを考えると,公共交通機関の便がいいところの方が…」と言ったら,一笑に付されてしまったには驚いた.「そんなこと,ここらへんの人は誰も気にしませんよ」.うーむ,そらほんまかいな.
そうやって公共交通機関を軽んじるから,いよいよ自家用車に依存しなきゃならなくなって,公共交通機関利用者が減り,さらに公共交通機関が廃れていく,という明白な負のフィードバックがかかっちゃってますね.たしかに,住んでみて「ここでは車がないと生きていけない」ってのは実感ですが,やっぱり間違ってると思います.
結局僕は住まいを北陸鉄道の駅のすぐそばに決めたんだけれど,まあ雪道運転はみんなずっとやてるから大丈夫なのだろうとして(僕はまだまだ全然自信ないけれど),じゃあ「飲んだ後とかどーすんの?」と思うんだけど….どの飲み屋にも大きな駐車場があるってことがすべてを物語ってるんでしょうなあ.車がないととても行けないような所に,いくらでも飲み屋があるのです.大きな飲み屋がね.
大阪って交通マナー悪いし,一般に治安もよろしくないからいろいろ事件も多くて物騒ではあるんだけどさ,石川に来て驚いたのは,とにかく「轢き逃げ」事件の多いこと.関西じゃほとんど轢き逃げは聞きませんでしたよ.ひき逃げやっちゃう人は,きっと酒が入ってるが為に余計恐怖して逃げちゃうんだろうなあと推測します.
それから,こっちの人ってほんとに歩かないみたいですね.どんなに近いところでも車で行きたがる.これも大阪辺りでは信じられない.僕らはめちゃめちゃ歩くの好きな人なので,犬の散歩で25km歩いたりする.これは例外としても,まあ歩いて15分の所なら「歩いて行く」のがまあ普通だと.1時間でも僕は歩きますが.ところが,こっちの人は絶対歩かないみたいですね.きっと大阪人の方が運動量多くて足腰強いのではないかな.
でもって,さらに困っちゃうのが「高齢者ドライバー」がすごく多いこと.関西ではほとんど見掛けないあの枯葉色の高齢者マークを,非常な頻度で見掛けます.あの超低速でしか走れず航続距離も短いいわゆるシニアカーなんかでは移動してられないってのはわかる.だからいくつになっても,むしろ高齢になるほど足腰が弱ってくるから,車に頼らざるを得なくなるってのもわかる.けれど,当然そういう人たちの運転は周りにとってはとても困った運転になっていることが多いんです.太い片側2車線,60km制限の道の右車線を,ひたすらマイペースで40km/hで走り続ける,なんていう車を結構見掛けたりすることになるわけです.いくら高齢者には優しく接したいと思っても,これでは社会的に迷惑と言わざるを得ないですね.
それもこれも,この公共交通機関の貧弱さが原因です.なんとかならないもんですかねえ.
しかしながら,そもそも,これは石川の人がキープレフトの原則に忠実だからこうなってる,というわけではないと推測します.本当の原因は,石川県の道路の構造,特に右折レーンの構造にあると思います.
片側2車線の石川の道を走るときは,注意が必要です.というのは,右車線が何の予告もなくいきなり右折専用車線になってしまうという道がひっじょーーーに多いからです.だから,なんか空いてる右車線があって,そこをヨソ者がいい気になって走っていると,曲がりたくもないのに右折せざるをえないことになったりするわけです.私も何度となくこのワナにはまりました.
そうやってやがてドライバーは疑心暗鬼になり,右車線はいくら空いていても使わない,ということになってしまうのではないでしょうか.そしてその結果が,左車線のみの渋滞という珍奇な現象となって表出しているのではないかと.
たいていの県では,交差点手前30mくらいで2車線を3車線に増やして,一番右の臨時車線を右折専用レーンとしています.それが一番わかり易くて合理的な手段だと思うのですが,なぜ石川にはこの構造の道が少ないのでしょう?理由がわかりません.せめて,右車線がそのまま右折になってしまう道では,ずっと前からその旨標識で指示して欲しい.じゃないと,県外者は絶対焦ります.これも事故のもと.ほんと,なんとかしてくださいよ.
で,石川ってひょっとして信号無視は常識?とか思ってたら,これが実は全然違ってて,やっぱりこれも道路の構造の問題.今回は信号の問題でした.
石川では,幹線に交差するそこそこ太い道(まあ普通に車が対向離合できる程度の道)には,幹線側には信号があるのですが,交差側には信号が無いということが非常に多いのです.じゃあ幹線側の信号は何のためか,というと,これは交差側の歩行者信号とだけ連動しているわけで.つまり交差側の道には歩行者信号のみあり,自動車用信号はない.だから,自動車は,幹線側の信号の状態を問わず,とにかく鼻を突っ込んでくる(突っ込まざるを得ない)ということになり,わけのわかってない幹線側の運転者は慌てる,ということになるのです.
関西だと,まずこういう構造の道はありません.そういう場合,ほぼ間違いなく「感応式信号」になっていて,交差側にも必ず自動車用の信号もあり,これが停止線付近に車が来たことを検知して青になる,という構造になってます.だから,石川のような幹線側信号が「青」なのに,交差側の車が鼻先を突っ込んでくるなんてことはまず起らないのです.それが起ったときは「信号無視だ」と思ってしまうわけです.
これ,どう考えたって危ないと思うのですが.まじでびびります.ある意味合理的と言えなくもないですが,幹線側ってだいたい交通量多いから,こういう構造の交差点だと,特に交差側が右折の場合非常に曲がりにくいという事にもなると思うし.なんとかしてくださいよね.
だから右折待ちで自分の進行方向の信号が黄色から赤になったら,普通対向車は止ると思って右折しちゃいますよね.ところが,実は対向は依然として青のままで,対向車は当たり前のように(当たり前なんだけれど)直進してくる.というわけで,右直事故を起こしそうになることがあります.自分も危なかったことが1度あるし,他にも危ない場面を何度も見ています.したがって,たとえ直進であっても常時「時差式」の文字に必死で注意してないといけないし(いきなり対向車が右折して突っ込んでくるかも知れないんだから),運悪く時差式信号個所で右折しなければならないハメになったら,前の信号に加えて,ミラーか何かで反対方向の信号にも注意してなきゃならないということになります.
でもって,目の前の信号が赤になっちゃったのに,対向がまだ青でガンガン直進車が来てたら,これはもう赤信号の交差点の真ん中でしばし立ち往生せざるをえなくなっちゃうのです.で,対向が赤になったら,交差側の直進車に謝りながら慌てて右折する.こういう構造の信号が8号線の小松警察署の目の前にあって,そこで赤信号で取り残されると,自分は悪くないと思っても,すごく浮足立ってしまいます.
これはもう絶対アルゴリズムに欠陥があります.誰がこんなアホでかつ極めて危険なシステムを発案し,しかもそれを吟味すること無く普及させてしまったんでしょう!信じられません.とにかく危険度では群を抜いています.実際事故は良く起ってるようだし,それがこの時差式信号の欠陥に原因があるとする訴訟も起ってると聞きます.早急にこの時差式信号を全廃し,必要なら右折信号を導入することを求めます.
ところが,石川に来て,とにかくこの右膨らみ型左折をする車がとても多いことに気づきました.最近は左折ウィンカーを見ると,その右を通り抜けるのがもう怖くて怖くて.なんでみなさんこんなブっサイクな運転するんですか?是非やめてくださいね.カッコ悪いですよ.
このような運転が多いことの理由として,ひとつだけ仮説があります.それは「雪」のせいではないかと.私はこの冬雪道を初めて体験しました.そこかしこに除雪した雪の山ができあがるわけですが,だいたいは車道の雪を歩道側に押し退けることになります.そうすると,交差点の各コーナーには道の真ん中に向かって張り出した形で雪山ができることになるわけで,山になってないまでも,雪がたまって滑りやすい状態になっていることが多いんです.したがって,左折しようとするとそのコーナーの雪をよけるように曲がらねばならなくなる.この結果,冬にはどうしても右膨らみ型左折をしなければならなくなるようです.この癖が雪の無い季節にも出てしまうのではないかなあ,と.
石川以外の雪国ではいかがでしょう.情報お待ちしています.:)
ただ,以上列挙したような交通事情の構造的欠陥のために,やらされているマナー違反が多々あるのではないかと思います.石川のドライバーの皆さん,ずっとここで暮してるとそれが「当たり前」になってるかもしれませんが,ヨソ者から見るとこんなにヘンな所がいっぱいあるのです.是非改善を求めるべきだと思いますヨ.(と,他人事のように…)