過去の番組の視聴率データを見ていると面白い。ビデオリサーチの頁には最新の視聴率データのほかに歴代高視聴率番組ベスト50なんていう欄があって、古いもの好きのわたくしとしては興味が尽きない。 それによると、調査開始以来最高視聴率を記録した番組は、1963年大晦日の紅白歌合戦だそうだ。数字を無断転載してはいけないので大雑把に紹介すると、国民のなんと8割以上がこの年の紅白を見ていたという(ここで取り上げる視聴率はいずれも番組を通しての平均視聴率である。最大瞬間視聴率はさらに高かったはずだ)。今からは想像もつかないほど紅白が日本人にとって年越しの必需品だったことを実感する。 しかしベスト50の表を見ているうちに、長時間の番組も短時間の番組も同列に「平均視聴率」で比べるのは不公平なような気がしてきた。短い番組ならTVの前に座っているのも楽だが、長時間視聴者をTVに釘付けにするにはそれだけの吸引力が番組に必要だ。そして長時間の番組はそれだけ視聴者の網膜(鼓膜)に多量に映像(音声)が届いているわけだ。だから、同じ視聴率なら長時間番組のほうが視聴者に与えた影響が大きいといえる。視聴率15%の2時間ドラマは、15%の1時間ドラマに比べて、2倍視聴者に受け入れられたと考えるべきだと思う。 そこで、「視聴率 (%)」と「時間 (h)」を掛け合わせた「視聴量 (%h)」とでもいうべき量を定義してみよう。ちょうど「電力 (W)」と「時間 (h)」の積で「電力量 (Wh)」を定義するのと似ている。たとえば2時間のドラマの視聴率が15%だった場合の視聴量は 15%×2h=30%h となる。 そうすると、1回の番組としての視聴量の歴代1位は、ダントツで連合赤軍あさま山荘事件(1972年2月28日)である(注)。11時間近くにわたって国民の半分がTVに釘付けになっていたというものすごい事態であった。視聴量で言えば550%hということになる。上に紹介した1963年の紅白の場合は80%×2.7h〜220%hであるから、いかにこの事件が日本中に衝撃を与えたかがわかる。 だがここで、もしレギュラー番組を1つの番組と考え、時間を累積してもよいことにすると、朝の連ドラなどは日曜を除く毎日放送しているから、全回の時間を累計すれば相当な時間になる。「おしん」(1983年4月〜1984年3月)ならば15分×300回=4500分=75時間。それで平均視聴率50%以上出しているのだから視聴量〜3300%h。あさま山荘など目じゃないぞ。 まあ連ドラをひとまとめにするのが適当かどうかは意見が分かれるところであろうが、やはり時代の中でその番組がどれだけ人々の印象に残ったか、どれだけ人々の話題に上ったかを測るにはこの方法が良いと思われる。 ただし、その時代を知るという目的のためには、積算を行なう期間はせいぜい1年を限度としたい。「笑点」のように35年続いている番組の視聴率を35年分累積することはいくらなんでも意味が無いであろう。いや、TVの全歴史のなかで一番見られた番組を調べるという意味があるか。(01. 1. 27) 【注】これは過去ベスト50の表に載っている番組だけを比較した結果であり、もし視聴率はベスト50に入っていないが非常に長時間の番組があれば、視聴量がこれを上回る可能性もある。仮に「愛は地球を救う」とか「一億人夢列島」の視聴率が23%を越えていれば、視聴量はあさま山荘を上回ることになる。これらの視聴率が実際にどの程度かは知らないけど。 |