神学校で神話学を講義する Camille ( Pascale Bussieres)は、 Martin ( Henry Czarny) に結婚を迫られているころ、とても愛していた 犬が死んでしまう。悲しみにくれてコインランドリーで泣いていると、 Petra ( Rachael Crawford) が優しく慰め元気づけてくれる。そして二人は… というストーリーです。
Camilleは、Petraがわざと間違えていった 洗濯ものの中にあったセクシーな服を着て 牧師の前でエクスタシーの話しをしたり、 昇進試験の面接で同性愛について肯定的なことを述べたりと、 同性愛を弾圧してきたキリスト教へのアンチテーゼを 全面に出しているかのような描き方である。
しかし、冒頭で謎の死を遂げる愛犬は Camille が Petra 達のサーカスについていった後、甦るのである。 そして、その時に流れる音楽は ハレルヤ である。 つまり、愛犬の死は Camilleの、日常や常識に捕らわれた心を表しており、 そこから解放された時、犬は甦りハレルヤが高らかに歌われる。 同性愛は、キリスト教の教義と相反するものではなく、 共存というか融合するものであることを描きたかったのではないだろうか。
一緒に見に行った佐藤氏は、「男が完全に邪魔もの扱いされてるなー」 と言ってましたが、最後に、安定した生活を求めてサーカスをやめ て来た女性が Martin とうまく行くような気配をただよわせます。 監督の Patricia Rozema は、自由な旅に出ていくCamille とPetraの方が好きで、 普通の生活を求める人なんか嫌いなのかも知れないけど、最後にそんなシーン を挿入する当たりは普通の人への優しさなのでしょうか。
サーカスのシーンで素晴らしいのは、Rachael Crawford が演ずる、光の玉 をもて遊ぶかのような幻想的なシルエットのダンスである。 Rachael Crawford ってなんてセクシーで可愛い人なんでしょう。 これが映画デビューらしいですが、伸びて欲しいですね。
(余談ですが、Rachael Crawford を扱ったページを探そうと思って、 Yahoo で、Crawford で検索したら、やはり Sindy Crawford しか出てこなかっ た。)
また、サーカスのテントの中での Camille と Petra の交歓のあいだ 演じられる、女性二人のブランコの芸も、幻想的で美しい雰囲気を もりあげます。 これまで、サーカスが出て来る映画ってどちらかというと、幻想性を追求する あまりオドロオドロしいのが多かったのですが、この映画はそうなることなく 幻想性と美しさを調和させている。
最後に気に入ったセリフを一つ。Petra たちのサーカスが、立ち退かなくては ならなくなり、パーティーをしているところに Camille が現れる。 Petra は Camille と一緒に踊り回りの人たちはそれをはやし立てる。 ばかにされたと思った Camille は、Petra に対して「もっと尊厳を持ってよ!」 と言いますが、それに対して Petra は言います。
「愛する人と抱き合い踊る、もっとも尊厳のあることだわ」