僕が1997年に見た映画のいくつかについて、感想およびデータ。
1975 ドイツ連邦 1h44
監督: ヴィム・ヴェンダース
出演: リュディガー・フォーグラー、ハンス・クリスチャン・
ブレッヒ、ハンナ・シグラ、ナスターシャ・キンスキー
この作品は原作というか原案がゲーテの「ヴィルヘルム・マイ スターの修行時代」だそうで、 監督自身が、「都会のアリス」「さすらい」とこの作品でロー ド・ムービー3部作と名付けているそうです。
書きつける言葉を探して旅に出た作家に、大道芸人の父娘、女 優、詩人志望の青年が合流して行く。その過程はユーモラスでどこかおかしみ を感じさせる。一行が郊外の自殺志望の人の屋敷に行き、その家主が結局首を 吊って死ぬあたりから、関係がおかしくなる。一行の旅に楽しみはなくなり離 散していく。作家 はまた一人言葉を探して旅を続ける。
屋敷から散歩に出たときに、気の弱そうな下手な詩を書くデブ が女ものの花がらの折り畳み傘を持っているところが秀逸だ。
僕はロード・ムービーはそれほど好きではないのだが、前半は 楽しめた。 行きあたりばったりで、人と出会い行き先が決まる。こういう 旅ができたらいいなという憧れを持って、映画自体を楽しめたんでしょうね。 ロード・ムービーはたいてい日常に退屈しきった主人公が何か を探してっていうようなパターン(ちんぷな言葉で言えば「自 分探し」?)が多いと思うのですが、しかし、こうやって旅を 続けて行くことで、本当になにかを見つけられるのだろうか。
この映画は、あのナスキンちゃんのデビュー作らしい。 やっぱりかわいい。
1987 日本
監督: 原一男
出演: 奥崎謙三
日本映画の監督を紹介する「監督選集」の原一男のページ。
奥崎謙三という元日本兵が、戦時中の軍内部の犯罪、 罪のない兵士が、戦争終結後に“処刑"された(そして食べられた?) という事件を徹底的に追求すべく、遺族とともに、 当時同じ隊に属していた兵士や軍曹に話を聞いて行くというドキュメント仕立 ての映画。 それも、「田中角栄に死を!」などと書かれた キャンペーンカーに乗って。いったいどこまでドキュメントなのかはわからな いが。
終戦直前の南方戦線における状況が語られる。 日本兵達は攻めも引くもできない状況で、 豚を捕まえて食べることで生きていたと言われているが、 実際の黒豚、白豚とは!
奥崎は、戦争などの非を認めずまったく謝罪しない昭和天皇に向かって、 パチンコを打つという行為などにより刑務所生活を送っていた。 アラヒト神たる天皇という戦前の教育を受けていながら、である。 そんな人物ゆえ、恐いものは何もない。元上官が当時の犯罪について 不誠実な受け答えをしたといって、なぐりかかったり。 「警察を呼びますよ」と言われたら、 自分から警察に電話をして呼んでしまう。
我々軟弱な現代人から見たら、まったく野蛮である。 信じられない。すさまじいエネルギーである。
その後彼は別の罪で投獄されるところで映画は終る。 彼の家は神戸にあり、その家もさまざまなアジが 書かれているらしい。
どうやら、すでに出所しているようであるが、 年老いてからの刑務所暮らしは辛かったようで、 もうあのすさまじいエネルギーは見られないようである、 と神戸の友人は語っていました。
1997 日本
監督: 宮崎駿
音楽: 久石譲
興行収入日本記録を更新している超人気定番アニメを見ました。 いろいろと難しい問題を提起します。人間にも森にも森に生き る生き物たちにも、それぞれの立場があります。今のまま 自然破壊を続けていくと破滅するのは目に見えている。しかし、 開発を全くや らないで生きて行くことはもはやできない。 そういった、環境問題など、 勘善懲悪ではわりきれない現代社会の問題(べつに現代に限っ た問題の特徴ではないんだが)を室町時代を借りて描いている。 お役人は見る人だれもが感情移入できない唯一の「悪者」とし て描かれています。
確かにそんな解決の無い問題の中に、人と人、人と自然の触れ 合いを生きて行くことに意味がある。 しかし、これだけ難しい問題を提出していながら、ラストに たたら場(製鉄所)の女頭領のエボシ御前はく言葉「良い村を作 るぞ」はないんじゃないか。「良い村」ってなんだよ。なにが 「良い」んだ?これは見たものを一瞬安心させるためのセリフ なのかもしれないが、よけいに不安になった。
1996 イギリス 1h33
監督: ダニー・ボイル
出演: ユアン・マクレガー、ユエン・ブレンナー、ジェニー・
リー・ミラー
The Internet Movie Databaseのなかの Trainspotting のペー
ジ。
かなり詳細なデータを得られます。
話題になってるし、テレビでやってる予告編を見た感じでは音 楽もよさそうなんで、機会があったら見に行こうかな、いやま あビデオでもいいや、と思っていたら、ちょうど空き時間と上映 時間が合ったので見てみました。
よくあるセックス&ドラッグの若もの映 画(うぅー、なんだかおやじ臭い言い方)かなって思っていて それほど期待していたわけではないのですが、いいでき!のり が良くって楽しい。渋谷で人気になるのもよくわかる。
何度もドラッグをやめようと思うんだけど、「やめる前に最後 に一度だけ」って結局続けちゃう人が主人公を中心に、パーティー、 AIDS、金儲けなどドラッグにまつわる悲喜こもごもをテンポ良 く描いてる。最後はちょっと安易な終り方かな。ダイアンはとっ ても可愛いから、もっと出してほしかった。
1973 アメリカ・イタリア 1h59
監督: リリアーナ・カバーニ
出演: ダーク・ボガード、シャーロット・ランプリング
ノーカット完全版ということでしたが、前にも見た人によると、 確かに前にはなかったシーン(ちょっとエッチなシーンが中心)があるけど、 前はあったのになーっていうのがなくなってる場合もあるとか。ラストの方の 結構重要ではっていうシーンもなくなってるらしい。
見終って出てみると、おっさんが「どこがノーカットなんですか、金返せ」っ ていちゃもんつけてた。このおっさんが最初っからうっとしくて、それほど空 いているわけでもないにもかかわらず、自分の前の席に荷物を置いて前に人が 来ないようにしたり、始まってから席を動いて見やすいところを探したりひと の迷惑を全くかえりみないおやじだった。
それはともかく、シャーロット・ランプリングはきれいだな。 でも、あんなふうに男を破滅させる女は恐いですね。
ストーリーとしては、ナチスの将校で恐らく戦犯なんだけど、ウィーンのホテ ルのクローク係としてひっそりと暮らしているところに、むかし、ナチスで可 愛がったユダヤ人の少女が偶然現れる。昔の罪がばれる!ってんで「なにしに きやがった!」と殴る蹴るわーかわいそーなんだけど、実は二人とも再会を喜 んでいて女を部屋に連れ帰ってしまうんですね。その後は世間的なものを捨て て二人で堕ちていくわけです。
最初は部屋に軟禁されるような感じで一緒に暮らしはじめて、 そのうちバレルとやばいんで男も仕事をやめて女性と二人だけですごして… 女性は憧れるんでしょうか、禁断の愛欲に堕ちていき なにもできなくなってしまう、それほどまでに愛して欲しいって。
細かい部分のストーリーの構成は安易な部分が多いです。 ちょっとネタバレがあるので読みたい人だけ →
舞台はウィーンなんだけど、みんな流暢に英語を話すのって やっぱり変な感じがした。
1996 アメリカ 1:41
監督: David Cronenberg
原作: J. G. Ballard
音楽: Howard Shore
出演:
ジェームズ・バラード James Spader
ヘレン・レミントン Holly Hunter
ヴォーン Elias Koteas
キャサリン・バラード Deborah Unger
ガブリエル Rosanna Arquette
David Cronenbergの「Crash」
J.G. Ballard のページ
クローネンバーグはいろんな手段で愛を描こうとしますね。そ の手段は一般的にはあまり愛のためのものだとは認められないようなもので、 それ自体でセンセーショナルであるために、その部分ばかりが宣伝されてしま いがちです。実際、表現としては強烈な性愛の形であることは 確かだが、その下にあるのは、「いわゆる恋愛」と変わらない愛である。いや、 巷のドラマや「いわゆる恋愛」ものの映画なんかよりもよっぽど深く愛を追求 しているよね。(あたりまえか)
今回、美術はかなり押えめです。もっとぐちゃ ぐちゃしてもよかったんだけどな。でも、事故で壊れた体を非常に機械らしい 機械で補助したり、生々しい傷跡をつけたりという身体改造の ようなことは、さすがにクローネンバーグというところでしょ うか。