著者:砂田利一
出版社:岩波
科学ライブラリー
出版年度:1997年
書名にあるパラドックスとは 「3次元以上の物体を適当に分割して最構成すると任意の3次元 以上の物体を作ることができる」というもので、任意に小さい ものから任意に大きいものをつくることができるし、任意のも のをいくらでも複製できる。もちろん構成的にできるわけでは ないが。
集合論の基礎にある選択公理を認めるとこんな奇妙な定理を導 けることをしめしたわけですが、選択公理がないとこれまたい ろいろと不都合がおきる。実数をとってこれないわけですから。
このシリーズの常なのですが、どうもつっこみがあまい。 まあいろいろと面白いことを知れるのですが、もっと楽しむた めには自分で調べてさらに本を読まねばならない。付録として ちゃんとした証明もついてるんですが、やっぱり難しかった。
ところで、エバンゲリオンのS2機関は このパラドックスを応用してエネルギーをつくり出していたら しい(^^)。
著者:丹治信春
出版社:勁草書房
出版年度:1996年
言語変化のダイナミクスを言語哲学の立場から論じています。
まず、後期ヴィトゲンシュタインの言語ゲーム論から入るので すが、その限界を指摘する。それは「意味理解」が成立するのは言 語使用者すなわち「我々の一致」に基づいているとする点であ る。
ここからクワインの全体論的な言語観へと発展させ、いよいよ 言語変化へと踏み込む。重要なのは「保障の原理」と「言語で は推移律が成り立たないこと」。
「保障の原理」とは、他の人と部分的に異なる言語を話し ている場合、異なる部分に関して共通した部分の言語を用いて 充分に他の人をなっとくさせるだけの説明(これが保障)をしな くてはならない。こうやって言語は変化して行くことが可能に なる。
言語は変化するが、お互いに全く話が通じないわけではない。 しかし、推移律は成り立たない。すなわち、言語A1と言語A2 の使用者との間で意志疎通できて、言語A2と言語A3の間で意志 疎通ができるとしても、言語A1と言語A3の間で意志疎通できる とは限らない。
この言語変化の場における意志疎通で、観察文(「これは〜です」み たいな文だと思う)が特権的に言語理解への入口とされるんだ けど、ほんとかなー。僕は「指示対象=意味」観に反対してい るんだけど、子供が言語を学ぶときってやっぱりそこから入る しかなのかな。