受験生の方へ
皆さんが大学院での教育に何を期待するかは様々だと思いますが、私は4年生までの学部教育が専門知識習得のための基礎を習得する場であるのに対して、大学院はさらに高度な知識を習得しながら、それを駆使して”研究を実践する場”であると考えています。
自分が持っている知識と経験を総動員して未知の課題に取り組み、研究を発展させる。そして、これまで知られていなかった現象や特性を見出す、それが大学院において味わうことの出来る最大の醍醐味です。
この醍醐味をどうやって味わうかって?それは、研究の過程でぶつかった壁を四苦八苦して自分の力で乗り越える経験をすることです。この味を一度でも味わったらもうだめです。研究が楽しくて病みつきになってしまいます。困難が大きければ大きいほど、その後の達成感も大きいからです。
高度な知識を持っていても手を動かさなければ研究は進まないし、逆に手を動かすだけで深く考え抜かないとデータの裏に潜む発見の意味を見抜くことは出来ません。
指導教員である私は、皆さんが困難を乗り越えるために必要なアドバイスやサポートを行いますが、やはり実際に実験している皆さんが新しい発見に出会う可能性がもっとも大きいのです。従って醍醐味を味わえるのも皆さんです。(本当に羨ましい!)
私の研究室の研究テーマである有機エレクトロニクス、分子デバイスといった分野は、まさに境界領域の研究です。外見は無機半導体を用いた素子とほぼ同じですが、有機材料の特性が無機半導体とは全く違うため、実は駆動原理すら正確には良く分かっていません。その一方で応用を目指した研究はどんどん進められています。
このようにある意味混沌としていますが、その分皆さんの実験が新しい発見につながる可能性も沢山残されています。未知の事に挑む研究は失敗の連続です。しかし、ある意味それが当然のことだと思います。せっかく貴重な数年間をここで過ごすのですから、「未知の領域に挑むことで自分の能力の限界を高める」、そんな気概を持ったチャレンジ精神旺盛な学生を歓迎します。
研究室紹介でも述べましたが、私の教育目標は、研究を通じて自己研鑽を積み、自分で考えて自律的に行動できる研究者を育成することです。
これまで民間企業、アメリカの国立研究所、イギリスの大学そして北陸先端大での研究経験を通じて、優れた研究者に沢山出会うことが出来ました。彼らに共通しているのは、次の3点です。
・目標を実現するまで決して諦めない執念
・常に新しい専門知識を学び続ける姿勢
・研究の”価値”を伝える優れた技術
最初のふたつはある意味で個人の資質に関わる事です。私の感覚では大学院に進学したということは、その学生がこれらの資質を多かれ少なかれ持っているとみなしています。
一方、最後の伝える技術に関しては訓練が必要です。すなわち、次の3つの能力を鍛えることで、より正確にそして的確に伝えることが出来るようになります。
・コミュニケーション能力
・プレゼンテーション能力
・ドキュメンテーション(文書化)能力
これら3つの能力は、将来どのような職種に進むにしろ重要であり、一生役に立ちます。このような観点から修士課程終了時には,担当した研究テーマについて深い専門知識を獲得するだけでなく、得られた研究成果を伝える技術が身につくように研究室の学生を指導しています。
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