Last Updated 2003,5/06


オゾンガスを用いたSi酸化膜の新しい低温形成法


図1 研究の背景
解説
 安価なガラス基板(石英の様に高融点のガラスではなく、600度ぐらいで 曲がるような安いガラス)やプラスチック上に、高精細かつ大画面のフラット パネルディスプレイを多機能で作製するためには、低温で高品質の薄膜トラ ンジスタ(TFT)の作製が必要である。その作製のキーとなる1つがゲート 絶縁膜、特にSi酸化(SiO2)膜の形成である。低温形成ということから、従 来プラズマを用いた堆積法が主に用いられてきたが、プラズマダメージや堆 積した表面がSiO2との界面になることから、Siとの界面特性が良くなかった。

図2  加湿オゾン法によるSi酸化膜作製の提案
解説
 プラズマを用いず、低温形成で、かつSi膜内部にSiO2との界面を作る という観点から、オゾンガスによる酸化が注目されている。しかし、オゾン酸 化では、形成速度が1時間でも3nmと遅く、TFTで必要となる30nm以上にはと ても使えない。そこで、界面特性を重視して、界面を形成速度が遅いがオゾン酸化膜 を、残りの厚い部分をプラズマCVD膜を用いた2層構造を採用している所があ る。これに対して本研究室では、オゾンガスを単に水に通し、そのバブリン グさせたガスを用いるだけで、250度の低温で1時間に10nmの高速形成が可能 な加湿オゾン酸化法を見い出した。

図3  加湿オゾン法による形成酸化膜の酸化温度依存性
解説
 赤四角、青三角がそれぞれ250、500度の加湿オゾンによる酸化速度を示 し、参考として480度のドライオゾン酸化のものを黒四角で示している。本 測定は、エリプソメトリ法により、酸化膜の屈折率を、1.46と仮定して行っ ている。図から分かるように、加湿オゾンのものは通常のドライのものに 比べて、酸化速度が約5倍以上速いことが分かる。また、加湿オゾンのもの は、60分以上酸化を行っても、酸化時間に対して酸化膜厚が線形の関係で成 長していることもわかる。さらに、500度のものよりも250度と低温の方がよ り長く酸化速度が飽和する傾向が見られない。  

図4 加 湿オゾン酸化膜の電気的特性
解説
 図では、酸化温度を250度90分、500度180分及び250度15分のCーV特性及び 電流密度ー電界特性を示している。図から、250度のものは、酸化時間が長 くなると電気的特性が悪くなるが、500度のものは、比較的良好な特性で 維持していることが分かる。

図5 加 湿オゾン酸化膜をゲートに用いたTFT特性
解説
 本TFTでは、加湿オゾンで500度30分+250度90分で処理して形成した厚さ約15nmの 酸化膜を用いた。温度が2段階の酸化を行ったのは、500度で良好な界面特性を、 250度で厚い膜厚を得るためである。図から、加湿オゾン酸化膜で良好なTFT 特性が得られていることが分かる。このことから、加湿オゾン酸化膜は、TFTの ゲート酸化膜として適応できることが明らかとなった。


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材料科学研究科