■■■サービス科学シンポジウム■■■

「医療・看護・介護サービスにおけるコミュニケーション革新」報告

急速に少子高齢化が進む日本において,医療・看護・介護サービスの質と効率の向上は, 極めて重要な社会的課題です.昨今の,スマートフォンやソーシャルメディアなどの コミュニケーション技術の進展は,多人数・多職種で行う医療・看護・介護サービスに 大きな変革をもらたす可能性を持っています.
本シンポジウムでは,医療・看護・介護サービスにおけるスタッフ間の コミュニケーションについて,先進的な取り組み,現場での実践をされている方々をお招きし, ご講演をいただきました.

また,JST RISTEX 「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」の1つとして, 2010年10月から3年間研究開発を行ってきた 「音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新」プロジェクト の成果報告を行いました.

日時:2013年11月18日(月) 13:30〜17:30

場所:北陸先端科学技術大学院大学 東京サテライト(品川)
(〒108-6019東京都港区港南2-15-1 品川インターシティA棟19階)
http://www.jaist.ac.jp/satellite/sate/access/index.html
参加者 63名

招待講演1
「状態適応型で設計・提供される医療・看護・介護サービスを社会技術とするための課題 〜 つぶやきICTによる「状況揮発性」と「情報共有困難性」の課題解決 〜」資料
水流聡子先生(東京大学 教授)

医療における記録の役割と,記録の課題としての「状況揮発性」,「情報共有困難性」 を指摘.医師,看護師などの各専門職にとって、優先度の高いもの、 専門的な注目事象は努力して記録しても、多忙な業務の中では、 個々の判断の中で記録対象から外れる可能性を具体例でお示しいただき, 状態観察の知識化・標準化の必要性と,「音声つぶやきシステム」の可能性に ついてご説明いただきました.

招待講演2
「地域医療・介護におけるICTツールの活用
    〜夕張での多職種連携〜」
資料
八田政浩先生(夕張希望の杜 理事長)

北海道夕張での在宅医療(支える医療)の現状と多職種連携が必要不可欠であること. そして,多職種連携の様々な工夫のなかで,「音声つぶやきSNS」を含むICTツール活用と課題・期待について, ご報告いただきました.また,「支える医療」の6年間の取り組みの結果, 一人当たりの医療費も減少しているなど,定量的な成果もご紹介いただきました.

招待講演3
「介護施設の申し送りを支援するシステムの現場参加型開発
   〜石川県恵寿グループ和光苑での試行評価〜」
資料
西村拓一先生(産業技術総合研究所 サービスモデリング研究チーム チーム長)

現場関係者のコミュニティ形成による自律的・継続的なシステム開発アプローチ (現場参加型開発)により,現場がシステムを開発・利用しながら主体的に意識・ 行動変容を行うことの重要性をご指摘いただき,その手段としての ワークショップの具体例(佐賀大学病院)をご紹介いただきました. また,現場参加型開発の例として,石川県恵寿グループ和光苑と取り組まれている 「クオリティスタディ支援システム」,「申し送り支援システム」を デモを交えてご紹介いだだけました.


プロジェクト成果報告
「音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新」プロジェクト全体概況報告資料
内平直志 (北陸先端科学技術大学院大学,研究代表者)

プロジェクトの目的と「気づき」の収集と活用のための 「音声つぶやきシステム」の概要を示し, 介護施設での試行評価結果のポイントを3つの価値 (ケア連携品質向上.ケア記録品質向上,ケア業務品質向上) の視点から報告しました. また,今後の展開として「気づきプラットフォーム」 (モデル,支援ツール,手法)およびその応用を 「気づき学」として発信していきたいとの決意表明をしました.

プロジェクト個別報告「音声つぶやきコミュニケーションシステム」資料
鳥居健太郎(株式会社 東芝 研究開発センター)

「音声つぶやきコミュニケーションシステム」の具体的機能と 介護施設での試行評価の具体的結果(ケア連携品質向上.ケア記録品質向上)を 説明しました.また,地域医療への適用の可能性についても紹介しました.

プロジェクト個別報告「サービス空間可視化・評価システム」資料
平林裕治(清水建設株式会社 技術研究所) 

「サービス空間可視化・評価システム」の具体的機能と そのシステムを使って実施した介護施設での業務可視化および 改善での活用を,具体的つぶやき事例を用いて説明しました.

プロジェクト個別報告「モデリング&シミュレーション」資料
平石邦彦(北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科) 

本プロジェクトの基盤技術としての 「モデリング&シミュレーション」の位置づけと, 特徴である「仮想フィールド実験」の評価結果を 説明しました.また,仮想フィールドおよび実フィールド から得られたログデータからのケアスタッフの行動分析についても 紹介しました.

プロジェクト個別報告「サービス評価」資料
杉原太郎(岡山大学 自然科学研究科)

本プロジェクトの基盤技術としての 「サービス評価」に関する3年間の取り組みを説明しました. 特に,介護施設での試行評価の一環で実施した 役割ストレス評価と振り返りワークショップについて紹介しました.

パネル討論

「医療・看護・介護サービスの質を高めるスタッフ間のコミュニケーションに必要なこと」
パネリスト: 水流聡子氏(東京大学 教授),西村拓一氏(産業技術総合研究所),
八木育美氏(ソノラスコート三鷹),中原宏和氏(夕張希望の杜),
内平直志(北陸先端科学技術大学院大学)
モデレータ:平林裕治(清水建設)

ご講演いただいた水流様,西村様に加えて, 東京都内の介護施設のケアを統括されている八木様, 夕張希望の杜で多職種間の情報共有ツールを運用されている 中原様をパネラーとしてお迎えし, 看護・介護サービスの質を高めるためのコミュニケーションに 関して,示唆に飛んだご議論をいただき,多くの「気づき」を得ることができました. 特に,音声つぶやきシステムを含む最新の情報共有ツールを, 看護・介護サービスの質の向上にどのように使っていくか(ユースウェア)に関して, 重要なチャレンジと未開拓の可能性を共有しました.

参加費:無料
主催・問い合わせ先:
「音声つぶやきによる医療・介護サービス空間のコミュニケーション革新」プロジェクト
研究代表者:内平直志
北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科
uchihira@jaist.ac.jp

本シンポジウムは、 社会技術研究開発センター(JST-RISTEX) 「問題解決型サービス科学研究開発プログラム」 の受託事業の一環として開催いたします。
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