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博士・修士論文執筆アドバイス:最終章
最終章(結論)の意義
最終章(結論)は,博士・修士論文が学位取得に値するかどうかを
判断する審査員に対する「最後の主張」です.
簡潔かつ効果的に本論文の価値を伝えることがポイントです.
「研究の目的と発見事項の簡単なサマリ」とともに,
本研究が「既存の学問体系に対してどのような貢献をしたのか」
を明確に主張する必要があります.また,「本研究の限界」や
「今後の課題」を適切に述べることで,著者が自分自身の研究を
客観的・批判的に捉えることができる能力があるを示すことが
必要です.
最終章(結論)の章の名前の例
最終章(結論)の章の名前にはバラエティがあります.
自分の好みで決めて良いと思いますが,
自分しか使わない突飛な名前は,「著者の強い意図」がない限り避けるべきと思います.
- 結論
- 結論と含意
- CONCLUSIONS
- Conclusion: Implications and Limitations
- CONCLUSIONS AND RECOMMENDATIONS
- Review of the research and implications
最終章(結論)に含まれるべき内容
以下の内容が含まれるべきですが,節の構成は各自工夫してください.
例えば,「本研究の限界」と「今後の課題」を別の節にしても良いし,
「本研究の限界と今後の課題」のように1つの節にしても良いと思います.
内容があまりないのに1つの節にする必要はありません.
- 研究の目的と発見事項のまとめ
- 「リサーチクエスチョンへの回答」という形式を取る場合が多いです.
- これまでの章で議論してきた「重要な発見事項」や「提案する理論」をまとめます.
内容の重複になるので簡潔さが大事です.
- 以前の章で述べてないことを,ここで新たに議論するのは避けましょう.
- 「提案する理論」として,この章で(前の章で全く触れていない)新しい理論もどき
(概念図,ポンチ絵)の提案をするのは避けましょう.
理論自体は前の章でしっかり検討・考察(証拠に基づいた論理的な手順の基づく理論構築)が
されている必要があるのは当然です.
特に,修士論文の場合は,無理して「新しい理論」をひねり出す必要はないと思います.
- 「提案する理論」として,理論モデルを示すケースも多いですが,理論モデルに関しては
別項(「理論モデル」についてのアドバイス)
を参照してください.理論モデルは「ポンチ絵」ではありません.
- 本研究の理論的・実務的な貢献・含意
- 既存研究に対する本研究の位置づけと理論的貢献(含意)を簡潔に述べましょう.
- 本研究の位置づけは,先行研究レビューにおいても行われているはずですが,
論文で提案した具体的成果をベースに,改めて論じ,研究領域における本研究の価値を
読者(審査員)に印象づけることが大事です.
- 本論文で「提案する理論」の説明やその意義に関しては,前述の「まとめ」に書けばよく,
理論的含意・貢献では,既存研究・理論に内在する問題や周辺の関連研究・理論との
関係を明確にすることが重要です.
- 既存研究と関連付けない「勝手な主張」は「研究論文」でなく「エッセイ」でしかありません.
「先行研究が全くないから新しい」という主張は先行研究調査の信憑性を疑われるリスクがありますので,
何らかの先行研究との関連性の議論は不可欠と思います.
- 本研究の実務的な貢献(含意)も重要です.修士論文で,実務的貢献が大きく,理論的貢献が微妙な場合は,
無理に「理論的含意」「実務的含意」を分けずに,「本研究の含意」としてまとめて書くのも良いと思います.
- 研究の限界と今後の課題(将来研究への示唆)
- 自らの研究の限界(弱点)をしっかり批判的に認識していることを示すことで,本研究への信頼度が高まります.
審査員から指摘されると思われる弱点はここで明記しておくと良いと思います.
- 研究遂行の過程で発生した問題についても,他の研究者に役立つことがあれば,ここで言及しても良いと思います.
- 「今後の課題」は自分自身が今後研究したい内容というより,本研究分野の研究者に対する将来研究への示唆という
視点で記述してください.もちろん,本研究分野の研究者に自分自身も含まれるので,今後研究したい内容も入っている
はずです.
事例
青島矢一先生のMITスローンスクールの博士論文の例
Aoshima, Yaichi. Knowledge transfer across generations: the impact on product development performance in the automobile industry. Diss. Massachusetts Institute of Technology, 1996.
Chapter6 Conclusion: Implications and Limitations
6-1 Managerial Implications
6-2 Theoretical Implications for New Product Development Strartegy and Organization
6-3 Limitations of This Study
参考資料
Writing up your PhD
(Qualitative Research)
- (concise) Recapitulation of purpose and findings
- Relationship with previous research
- Limitations of your research (Anticipation of criticisms)
- Problems arising during the research
- Implications of your findings
- Recommendations (for research; for action / policy /change)
- Your contribution to research
- Autobiographical reflection
Headings for the Final Chapter of your PhD
- Summary of Research Findings (2-3 pages)
- Comparison with Previous Research (3-4 pages)
- Theoretical Implications of Findings (3-4 pages)
- Limitations of the Study/Investigation (1-2 pages)
- Future Research
- Direct Extensions of the Study (1-2 pages)
- Broader Issues to be Covered in Future Work (1-2 pages)
- Practical Implications of the Research (1-2 pages)
- Conclusion (1 page)
問い合わせ先:内平直志 uchihira@jaist.ac.jp