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内平研究室における先行研究調査の進め方
アドバイス
先行研究調査では、調査だけでなく課題も書く
研究対象となる分野の先行研究を体系的にまとめるだけでなく、
先行研究の課題(足りない点)を書くことが重要。
その課題を解決するために、本研究を行う必要性があるということを明確に主張する。
単にいろいろ調査したことを書くだけでは尻切れトンボで後に繋がらない。
博士・修士論文での先行研究調査は、その分野の解説記事のつもりで書く
ページ数に制限のない博士・修士論文での先行研究調査は、
その分野の解説記事のつもりで書く。
すなわち、読者がその先行研究調査を読むだけで、
その研究分野の研究動向が体系的に把握できることを目指して丹念に書く。
重要な先行研究に関しては、その内容も図表の引用も含めて、丁寧に
レビューしておくと良い。読んだ文献は自分でも忘れてしまうので、
先行研究調査をしっかりまとめておくと、将来、自分自身が読み返すとき
にも役に立つ。
博士・修士論文での先行研究調査はその後の章で活用する
先行研究調査で説明した論文は、その後の博士・修士論文の章の展開の中で
何らかの形で引用し、論文の論理展開や新規性主張の材料として活用する。
その後の章で一切活用しない論文は先行研究に詳細に記述する必要はない。
ただし、研究動向を体系的に把握するのに必要な先行研究は簡潔に言及するべきである。
具体例
例:「研究開発プロジェクトマネジメントの知識継承」
出典:
内平直志、
研究開発プロジェクトマネジメントの知識継承、
北陸先端科学技術大学院大学 学位論文 (2010)
- 第 3 章 先行研究の検討 (pp.25-52)
- 3.1 研究開発マネジメント
研究開発マネジメントに関連する先行研究を紹介。
グ多的には、研究開発マネジメントの機能、
ステージゲート/フェーズレビュー管理、
戦略技術ロードマッピング、
シナリオプランニング、
に関する重要な先行研究を紹介。
- 3.2 知識の移転と継承
- 3.2.1 知識経営における知識移転・継承の位置付け
- 3.2.2 知識移転・継承のモデル
- 3.2.3 知識移転・継承の具体的手法
- 3.3 プロジェクトマネジメント知識の継承
- 3.3.1 プロジェクトマネジメントの知識と体系化
- 3.3.2 プロジェクトマネジメント知識継承の手法
- 3.3.3 研究開発プロジェクトマネジメントの知識継承
- 3.4 本研究の位置付け
先行研究調査では、研究開発プロジェクトマネジメント、知識の移転/継承、
プロジェクトマネジメントの知識継承に関する先行研究を検討した。
知識移転/継承に関しては、膨大な先行研究があるが、「研究開発プロジェクトマネジメント」
というドメインにおいて、知識継承を体系的に検討したものは少ない。
また、設計ケースヒストリ、ラーニングヒストリ等のケース(事例)や
物語をバウンダリオブジェクトとした知識継承は、近年、主に実務面から注目を集めているが、
「研究開発プロジェクトマネジメント」への適用は進んでいない。
また、研究開発に限らず、知識継承の内面化について検討したものは少ない。
先行研究に対する本研究の意義を表で示した。
例:「グローバル・イノベーションのマネジメント」
出典:
岩田 智、
グローバル・イノベーションのマネジメント―日本企業の海外研究開発活動を中心として、
中央経済社 (2007)
- 先行研究の検討と課題(pp.12-30)
- 先行研究の検討
- 研究開発のグローバル化の実態把握
日米欧の企業の研究開発のグローバル化の実態調査に関する文献を
調査し、主要な文献の概要を紹介。
- 海外研究開発拠点の活動内容の検討
海外研究開発拠点の活動のパターンに関する主要な文献を紹介。
- 研究開発のグローバル化の影響因や決定因の探求
国内と国外に研究開発拠点を置く理由に関する文献の紹介。
- 海外研究開発活動の管理体制の考察
グローバル研究開発のイノベーション管理のタイプに関する
詳細な文献紹介および、ナレッジマネジメント、ネットワーク、
コミュニケーション、人的資源管理の各視点からの文献の紹介。
- 研究開発のグローバル化の成果分析
グローバル研究開発により、どのような成果が生まれているかに
関する文献の紹介。
- その他の研究
上記の枠組みに入らない関連研究の紹介。
- 先行研究の課題
先行研究の総括とともに、先行研究における下記の3つの課題を挙げ、
本研究で、それらの課題を解明することの必要性を述べる。
- 先行研究では、イノベーションを生み出す戦略プロセスや組織メカニズムに
関する検討が不十分である。
- 先行研究では、日本企業を対象にした本格的な研究は少ない。
- 先行研究では、特許データを使った研究が多いが、特許に表れない
技術・知識・ノウハウをも分析対象にする研究が十分行われていない。
問い合わせ先:内平直志 uchihira@jaist.ac.jp