担当:真隅 暁 日時:5/12(木) 16:00- 場所:5Fコラボ2 内容:論文紹介 紹介論文: Christopher Flynn Martin, Rahul Bhui, Peter Bossaerts, Tetsuro Matsuzawa and Colin Camerer, "Chimpanzee choice rates in competitive games match equilibrium game theory predictions", Nature Scientific Report 4:5182 (2014). 論文入手先: http://www.nature.com/articles/srep05182 概要: この論文では,戦略的な意思決定に関わる認知能力の種間共通性・差異を 明らかにするために,ゲーム的状況におけるヒトとチンパンジーの意思決 定に対して比較実験を行った結果を報告しています. 具体的には,マッチングペニーと呼ばれるゲーム(を含む3種類のゲーム)を 用い,ゲーム理論がナッシュ均衡として予測する結果(主に各選択肢の選択 頻度など)が,ヒトとチンパンジーのどちらの実験データにより良くフィッ トするか,が分析されています.その結果,ヒトよりもチンパンジーの方 がより理論にマッチした,という結果が得られています. 著者らはこの結果に基づいて,「競合的な状況に対し,チンパンジーはこ れに特化した認知能力を持ち,ヒトと同等以上の成績を残すことができる」 という仮説を提示しています. 実験結果からこの仮説が導かれる背景には,「チンパンジーの社会は人間 社会に比べてより競合的だった.ゆえに,競合的な状況での行動調整能力 に対して,より強い選択圧がかかっていた」という先行研究の知見(仮説) と,伝統的なゲーム理論における「合理性=プレイヤーは自身の利益を最 大化する戦略をとる」という仮定があります. さらに著者のなかには,伝統的なゲーム理論に対して批判的な立場をとる 研究者が含まれていて,その姿勢が著者らの前提(premise)になっていると 推測されます.そのため,著者らにとっては今回の実験も「理論と現実(の 人間の振る舞い)の不一致を示す一事例」という位置付けかもしれません. ゼミでは,著者らが提示する仮説の論理を検討し,その後,著者らが(暗に) 主張している「ゲーム理論の不備」について議論できればと考えています. Speaker: Akira Masumi Date & Hour: 12 May (Thur) 16:00- Place: 5F Collaboration Room 2 Title: Reviewed paper: "Chimpanzee choice rates in competitive games match equilibrium game theory predictions"