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EMCとMDAにより顔画像から個人性と表情の解析を行った.
その結果・考察を以下に要約する.
- 個人性の解析
- 個人性の分離度と識別率の関係
- 分離度1ではEMC,分離度2ではMDAが高い分離度を得た.
- EMCの固有値が正の固有ベクトルでは識別率が高く,
負の固有ベクトルでは識別率が低くなった.
このため,EMCでは固有値が正の固有ベクトルで射影した成分のみを用いて
個人識別を行えば,高い識別率が得られると考えられる.
- MDAの固有値と識別率に相関があった.
このため,MDAでは固有値が大きい固有ベクトルで射影した成分を用いて識別
を行えば,高い識別率が得られると考えられる.
- 個人識別実験
- PCAに比べ,EMC,MDA共に少ない使用次元数で高い識別率を得た.
- 特にMDAは少ない使用次元数で識別率が向上している.
- EMCよりもMDAの方が識別率が良い理由として,
MDAの軸が斜交であることより級間分散を大きくするような強調効果が起こる
ことが考えられる.
- 固有ベクトルの表す顔画像の傾向
- EMCの低次の成分は個人性を表しており,高次の成分は他の要因による成
分を表している傾向があった.
- MDAの固有ベクトルの表す顔画像の特徴が明確に現れなかった.
この原因として,
固有ベクトル の決定に級間分散と級内分散の比の最大化を評価基準とす
るため,
ある画素の全分散が小さくても級間分散と級内分散の比が大きければ,
のその画素に対する重みが大きくなることが考えられる.
- 表情の解析
- 表情の分離度と単一固有ベクトルによる識別率の関係
- 分離度1ではEMC,分離度2ではMDAが高い分離度を得た.
- EMCの固有値が正の固有ベクトルでは識別率が高く,
負の固有ベクトルでは識別率が低くなった.
このため,EMCでは固有値が正の固有ベクトルで射影した成分のみを用いて
表情識別を行えば,高い識別率が得られると考えられる.
- MDAの固有値と識別率に相関があった.
このため,MDAでは固有値が大きい固有ベクトルで射影した成分を用いて
表情識別を行えば,高い識別率が得られると考えられる.
- 表情識別実験
- PCAに比べ,EMC,MDA共に少ない使用次元数で高い識別率を得た.
- 特にEMCは少ない使用次元数で高い識別率を得た.
- EMCよりもMDAの方が識別率が低い原因として,
MDAの無相関性により級内分散の各次元間の偏りが軸の決定に大きく影響して
いるのではないかと考えている.
- 固有ベクトルの表す顔画像の傾向
- EMCの低次の成分は表情を表しており,高次の成分は他の要因による成
分を表している傾向があった.
- MDAの固有ベクトルの表す顔画像の特徴が明確に現れなかった.
この原因として,
固有ベクトル の決定に級間分散と級内分散の比の最大化を評価基準とす
るため,
ある画素の全分散が小さくても級間分散と級内分散の比が大きければ,
のその画素に対する重みが大きくなることが考えられる.
- 顔画像の正規化の影響
- 輝度値の正規化の有効性
- PCAでは,正規化をするに従い識別率が向上している.
PCAは照明による影響が低次に現れるため,輝度値の正規化が特に有効である.
- EMC, MDAでは,クラスの特徴が低次の成分に集められているので,正規化の効
果は見られなかった.
- 顔領域の切り出し範囲の影響
- 個人識別では切り出し範囲が小さいときに識別率が低下するという結果が得ら
れた.
これは背景が写っていても,級内の分散が充分小さいため影響は小さいが,切
り出し範囲が小さいと顎や髪の毛の情報が使えないために識別率が下がると考
えられる.
- 表情識別では切り出し範囲が大きいときに識別率が低下するという結果が得ら
れた.
これは表情の情報が,顔領域の中央部に多く存在し,顎や髪の毛に表情情報が
無いことによるものと考えられる.
- 画像解像度の影響
- 本実験の画像解像度の変動範囲では識別率への影響が考察しがたい結果
となった.
画像解像度を更に細かく変動させた時の影響について今後検討したい.
- 目・鼻の特徴抽出精度の影響
- 基準点の抽出の小さなずれで,著しく識別率が低下した.
EMC, MDAを適応して,個人識別で識別率90%程度,表情識別で識別率50%程度
を得るには,誤差が10 pixels以下の精度の特徴抽出手法が要求される.
- 主観評価との関係
- 識別率は表情クラスと評価クラスが一致する評価者の最低人数との相関が高い.
これは,データベースの表情クラス内の画像が,評価者によって絞り込まれる
ために級内分散が小さくなったと考えられる.
Takayuki Kurozumi
Sat Mar 27 06:27:54 JST 1999