<はじめに>
オプティカルフロー推定法は画像中の動物体解析に有力な手法である。近年
の研究成果により単一物体の運動の推定に関しては、高精度な解析が
可能になってきている。
しかし、画面中に動きの異なる物体が複数存在する場合、従来の
オプティカルフロー推定法では対象物体の動きの複数性によってその解析が
困難となる[1]。
例えば、従来手法である最小2乗法[2]では、求められたフロー値に例外値が
含まれている場合には、その例外値の影響を強く受ける。そのため交点の
分散が激しい境界近傍のフロー推定精度が低下する。
また投票を用いた手法[3]も報告されており、ノイズに対するロバスト性が
高く交点分布が分散しても安定にフロー推定が行えるという利点があるが、
境界近傍では、注目画素とは異なる動きが投票値としてピーク値を持つ
可能性があり、フロー推定精度が低下する原因となる。
このように動きの異なる物体が複数存在する状況では、
交点の分散が激しい境界近傍においてフロー推定精度が低下する。
本研究では、
速度空間上で分散した拘束直線の交点をクラスタリングすることで、
動きの異なる複数の物体を分離させ、全体的なオプティカルフロー推定精度
の向上を目的とする。特に、推定精度が著しく低下する
物体間の境界近傍に注目し、従来手法よりも高精度にフロー
推定を行うことを目的とする。