多様な戦略を持つオセロAIの生成
背景と目的
近年,チェスやオセロなどの思考ゲームにおいて,人間よりはるかに強いコンピュータプレイヤ(AI)が開発できるようになりました. そういったAIを初級者中級者用に調整することは決して容易ではありません.特に,・できれば,人間プレイヤの強さに自動的に合わせたい
・強さは同じくらいでも,異なる戦略や弱点を持つ相手を用意したい
・手加減はしてくれるが,それがあからさまにならないようにしたい
といった課題があります.
これらの課題を踏まえ,人間プレイヤのライバルたちになれるようなAI群を自動生成することを目的としました.
アプローチと結果概要

本研究ではオセロを対象として,前述の課題を踏まえ,
(a)プレイヤーの強さを着手から計測・模倣する手法
(b)多様な特徴を持つAI群を生成するアルゴリズム
(c)不自然な手加減を行わないような政策モデル
の3つの技術要素を開発し,組み合わせて用いました.
まず(a)の技術によりプレイヤのコピーとなるエージェントAIを作成し,(c)のモデルを用いて,そのパラメータを遺伝的アルゴリズムという(b)のための技術で最適化します. ここでは,「エージェントAIとの勝率が五分に近く,かつ他のパラメータと離れているパラメータが,良いものである」という仮定に従って最適化を行います.
このシステムを用いて,オセロ初級者10名を対象に被験者実験を実施し,AIの強さ・多様性・着手の自然さの観点からシステムの性能評価を行いました.
実験の結果,80%の被験者について
・AIと12戦して5~7勝する,つまり結果は五分に近い
・着手の不自然さが全くない.つまり不自然な手加減が見られないと回答
という結果を得ました.この結果より,概ね当初の目標を満足する結果が得られたものと考えます.
研究担当者,業績,リンク等
・本研究は上田陽平(2011卒)が主に担当しました.・本研究においては以下の論文が採録されました.
- 上田陽平,池田心:
遺伝的アルゴリズムによる人間のレベルに適応する多様なオセロAIの生成
第27回ゲーム情報学研究会(2012-03)
- Kokolo Ikeda, Yu Tanaka, Simon Vennot, Quoc, Nguyen Huy Quoc, Yohei Ueda:
Adaptation of Game AIs using Genetic Algorithm: Keeping Variety and Suitable Strength
2012 Joint 6th International Conference on Soft Computing and Intelligent Systems
and 13th International Symposium on Advanced Intelligent Systems, pp. 945-951, 2012