Imai_Kaneko'88(Y.Hayashi)

ロンドンのコーヒーハウス

-「情報革命」の現場-

入口は狭くつまずきそうである. 階段を二, 三段昇ると大きな部屋があるが, 内装は 古風な感じだ. しかしびっくりしたのはその喧騒ぶりである. あちらでワイワイこちらでガヤガヤ, 何か書いている者もいれば, おしゃべりに無中な のもいる. コーヒーを飲んだり, タバコを吸ったり, 議論をしたり, ともかく部屋中が 煙だらけで船室のようだ.

木棚の上のびんやカップにまじって化粧品の広告が置かれているが, その下の方には 議会が定めた条例文が掲げられ「汚い言葉は排除すべき」などと書かれている. 壁の方には, 黄色い液体, 錠剤, ヘアトニック, キャラメル, 咳止め薬などが, どれも 効果抜群, 最高級品とばかりに陳列されている. コーヒーハウスだと聞かされなかったらバーゲン売り場と思ったかも知れない.

まあしかし, こうしてしばらくいろいろなものに囲まれて座っていると, そのうち コーヒーの一杯も飲みたくなるのだから不思議なものだ.

エドワードウォードの「ロンドンハウス」より引用.

そこには, すさまじい混乱状態の中に, さまざまな情報が行き交い, 自由な力, 活気, 新しいもの, 珍しいものを求める求心力が存在した.

また, バランスの取れた常識人ではなく, その時代の社会規範からすると多少とも 「気がふれた」人々が新しい秩序を作った.


林 幸雄 (yhayashi@jaist.ac.jp)
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