第7回シンポ 概要一覧
- O1-1:永田勝也, 白山晋(東京大学大学院工学系研究科)
- 題目:潜在リンクの実リンク化の違いによる情報伝播の変化
- 概要:口コミや感染症の伝播,集団の意思決定などの社会現象は,背景に存在する人間関係のネットワーク構造に影響を受けることが知られてい
る.本稿では,人を介してどのように情報が伝播していくかを調べる.特に,潜在リンクと呼ばれる,共通のノードを有するがリンクが存在しないノード間の関
係性に着目する.潜在リンクを有する新たなネットワークモデルを提案し,モデルによって作られたネットワークに対して単純な情報伝播モデルを用いてシミュ
レーションを行う.分析の際,情報伝播とネットワークの統計的指標の関係性を明らかにすることを試みる.分析ツールとして,データマイニングを使用する.
- O1-2:小松孝紀,生天目章(防衛大学校 情報工学科 知能情報研究室)
- 題目:伝搬の拡大に適したネットワークの構成法
- 概要:本稿では,新しい情報や画期的な商品が社会に浸透していく様相をネットワーク上における伝播プロセスとして考える.特に,ネットワーク
構造を規定する隣接行列の最大固有値の逆数が伝播現象の閾値であることに着目し,最大固有値の最大化を目的とするネットワーク構成法を,進化的手法により
提案する.さらに,最大固有値を最大にするための簡単なネットワーク構成法を提案する.伝播現象をSISモデルによりをコンタクトプロセスとしてモデル化
し,ネットワーク上での伝播実験を行う.伝播閾値が小さいとされるスケールフリーネットワークやランダムネットワーク上での伝播プロセスと比較し,最大固
有値に着目し構成したネットワークが最も伝播閾値が低く伝播が生起し易いネットワークであることを明らかにする.
- O1-3:湯浅友幸,白山晋(東京大学大学院工学系研究科)
- 題目:ネットワーク上のシミュレーションのデータマイニングによる分析
- 概要:ネットワーク上の現象をシミュレーションによって調べ,その結果を,平均頂点間距離,クラスター係数などの統計的指標との関係性から分
析した研究は多い.それらの多くは,限定したネットワークモデルで,生成パラメータを変え,当該ネットワークモデルによって制御可能な統計的指標が結果に
与える影響を調べるという方法を採用している.また,ネットワークモデル間の性質の違いのため,複数のモデルを用いて複数の統計的指標を算出し,それら全
体を説明変数として分析を行うものは少ない.一方,現象と統計的指標の関係は複雑であり,一つの統計的指標での分析は時として異なる知見を導くことが知ら
れている.本稿では,はじめに複数の統計的指標が制御できるネットワークモデルを提案する.次に提案したモデルから多様なネットワークを生成し,大規模な
シミュレーションを行い,複数の統計的指標とシミュレーション結果の多数の組を求める.それらをデータマイニングによって分析し,効率的に知見を導くとい
う新たな方法論を提案する.
- O1-4:小頭 秀行, 会田 雅樹, 中村 元(KDDI研究所)
- 題目:携帯電話による音声通話とEメールの通信先次数特性と相互関係
- 概要:携帯電話の急速な普及に伴い,ユーザが個人で情報通信端末を保有する環境になっている.
その結果,トラヒック量やユーザ数など情報通信サービスの各種データには,人の繋がりを表す社会ネットワーク構造など人間社会の特性が反映されていると考
えられる.
このような状況において,筆者らはこれまで,異なる情報通信サービスのデータを分析することで,データの背後にある一般の社会ネットワーク構造の解明を目
指してきた.
具体的に,携帯電話による音声通話とEメールの通信トラヒックを分析した結果,通信手段の違いにより異なる通信先次数分布が観測されることを示し,その発
生要因について考察を行った.
本稿では,これまでに観測及び検証した特性の相互関係を解析し,異なる次数特性が発生する条件を明らかにする.加えて,明らかにした条件の整合性につい
て,実測データの結果を基に検証を行う.
- O2-1:Yoshimi Yoshino, Naoki Masuda(東大情報理工)
- 題目:Evolution of cooperation is a robust outcome in the prisoner's
dilemma on dynamic networks
- 概要:Dynamics of evolutionary games strongly depend on underlying
networks. We study
the coevolutionary prisoner's dilemma in which
players change their local networks as well as strategies
(i.e., cooperate or defect). This topic has been
increasingly explored by many researchers. On the basis of active
linking
dynamics [J. M. Pacheco et al., J. Theor. Biol. 243, 437 (2006), J. M.
Pacheco et al., Phys. Rev. Lett. 97, 258103 (2006)], we show
that cooperation is enhanced fairly robustly. In particular,
cooperation evolves
when the payoff of the player
is normalized by the number of neighbors; this is not the case in the
evolutionary prisoner's dilemma on
static networks.
- O2-2:高口太朗,増田直紀(東大情報理工)
- 題目:接触イベントの時間間隔が非ポアソン的な投票者モデル
- 概要:社会現象ダイナミクスのモデル化の代表例として社会ネットワーク上の確率過程によるものがある。それらのモデルではペアごとの接触イベ
ントの発生はポアソン過程に従うと仮定されてきた。近年、現実のコミュニケーションにおける接触イベント発生の時間間隔はポアソン的でなく裾野の長い分布
をしていることが報告されている。この特徴を意見形成の代表的モデルである投票者モデルに導入し、シミュレーションを行った。その結果、裾野の長い時間間
隔分布が意見統一に与える影響はネットワーク構造によって異なることがわかった。発表ではその理由についても考察する。
- O2-3: 町田拓也(明治大学先端数理科学インスティテュート)
- 題目:ランダム・グラフ上の枝の量子探索
- 概要:量子コンピュータの基礎理論構築の1つのテーマとして,グラフ上の頂点を探索する量子アルゴリズムの研究が行われている.これまでに探
索アルゴリズムのいくつかは,量子ウォークによって構築されている.量子ウォークを用いることで,探索成功確率を高め,探索成功までの平均計算時間を古典
的なアルゴリズムよりも劇的に早くすることができるという結果がいくつか得られている.本研究では,頂点ではなく,枝を探索することに焦点をあて,グラフ
上の離散時間量子ウォークを適応することで,頂点を探索するのと同様,探索成功確率を高めることができる数値計算結果を得ることができた.
- O2-4:小林直樹,白山晋(東京大学工学系研究科システム創成学専攻)
- 題目:局所構造の変化と現象の関係を用いたネットワークのデザイン
- 概要:ネットワーク構造の局所的な変化がその上で起こる現象に影響を与えることは知られている.局所構造の変化によって全体の特性が変わる
が,その過程自体が分析されることは少ない.また,定量的な評価がなされることは少ない.本稿では,局所構造の変化と同期現象の関係を分析することで定量
化指標を導く.さらに,その指標を用いた同期に適したネットワーク作成手法を提案する.
- O3-1:目黒有輝, 林幸雄(北陸先端大)
- 題目:リンク淘汰とショートカット付加によるネットワーク自己組織化
- 概要:地理空間上にネットワークを構築する場合、出来るだけ少ないリンク本数で、素早く情報伝達ができ、不慮の故障や悪意のある攻撃に対して
も頑健である事が望ましい。また、災害時や移動体の通信をも想定すると、自律分散的にネットワークが構築できることが重要となる。そこで、リンクの淘汰及
びパスの強化により構造がダイナミックに変化するネットワークモデルを考えた。
まず、一様ランダムなノード配置を初期構造として、人口密度に応じて各ノードに割り当てられた確率でパケットを発生させる。その際、パケットの通過頻度が
低いリンクの淘汰や、頻度が高いパスを強化する等のショートカット付加を行う。その構造的特徴、通信効率、頑健性に関する結果の詳細については、発表時に
説明する。
- O3-2:今井哲郎,田中敦(山形大学大学院理工学研究科)
- 題目: ASネットワークトポロジのためのゲーム理論的トポロジ形成モデルの提案
- 概要:近年のインターネットトポロジに関する研究により,インターネットにおけるAS(Autonomous
System)間トポロジが,スケールフリー性と呼ばれるべき則の次数分布に従うことが分かってきている.我々はこれまでに,ASトポロジ形成をモデル化
したゲーム理論的なスケールフリートポロジ形成モデルを提案し,この提案モデルがミクロ的にASトポロジ形成の説明モデルとして妥当であること,またマク
ロ的にスケールフリートポロジを生成するモデルの一つとなりうることを示している.本発表では,我々のトポロジ形成モデルを紹介し,これまでに得られた数
値的,解析的な結果について述べる.
- O3-3:松久保潤(北九州工業高等専門学校),林幸雄,小野泰正(北陸先端大)
- 題目:長方形分割ネットワークにおける階層構造に基づくショートカットリンク効果
- 概要:近年,無線のアドホック通信ネットワークなどの分野で,地理的空間に埋め込まれたネットワークモデルの研究が盛んに行われている.
このようなモデルに,ネットワークを生成する領域全体を自己相似な部分領域に分割しながら格子状に成長するMSQモデルが提案されている.
MSQモデルは,他の地理的ネットワークモデルと比較して,高いロバスト性と短い最短経路長をもつ.
一方,Kleinbergは,均一なOut-degreeをもつ頂点から成るネットワークにショートカットを追加することで,局所的な情報のみを用いてO
(logN)の探索ホップ数を
実現できるネットワークの構築理論を示している.
本報告では2つの研究の関連性に着目し,従来のMSQモデルとKleinbergの手法に基づいてショートカットを追加したMSQモデルの特性を比較・検
討する.
- O3-4:Toshihiro Tanizawa(高知工業高等専門学校), Shlomo Havlin, and H. Eugene
Stanley
- 題目:Analytical study of the robustness of scale-free networks with
degree-degree correlation against targeted node removal
- 概要:It is well known that the scale-free network is very fragile
against targeted node removal of highly connected nodes (hubs). Most of
the existing analyses are, however, only based on the degree
distribution of the network and how degree-degree correlations between
nodes affect the robustness against selective node removal does not
seem to be well known at present. In this presentation, we derive
analytical expressions for the percolation threshold and the giant
component size when the degree-degree correlation is fully incorporated
and for different types of node removal. Next, we numerically improve
the robustness of several scale-free networks against selective node
removal with these expressions and find that the robustness is
considerably improved by introducing the assortative degree-degree
correlation between hubs.
- O4-1:Masaki Tomochi(沖縄国際大学 経済学部), Atsushi Tanaka, Tatsuhiro
Shichijo
- 題目:Stratification and Nested Structure of Small World in a
Friendship Network
- 概要:We have analyzed effects of spatial and social distance on a
friendship network. We used the data obtained from "Tomocom.jp" which
is a social network service where approximately 300 undergraduate
students living in several areas in Japan are participating. From the
data, we have found that spatial and social distance between
individuals causes stratification in the friendship network and brings
about nested structure of small world. Based on what we have found in
the data analysis, we have built a model and successfully replicated
the nested structure of small world.
- O4-2:吉澤康介, 三宅修平(東京情報大学)
- 題目: インターネット通販サイトにおける関連商品情報等の抽出と可視化の試み
- 概要:インターネット通販サイトの商品ページには、多くの場合、関連商品等へのリンクが掲載されており、この情報を取得することで、商品情報
のネットワーク分析が可能となる。
筆者らは、ブラウザを自動運転するなどしてこれらのリンク情報を取得し、Cytoscapeを用いて可視化することを試みている。
- O4-3:三宅修平, 吉澤康介, 海保達郎, 鈴木美香(東京情報大学 総合情報学部 情報ビジネス学科)
- 題目:株式所有ネットワークの可視化と分析
- 概要:企業間の関係性には,財務上および営業上の取引関係,役員の派遣・兼
任による関係,株式の保有による資本関係等がある.
本論では,戦後の日本において,株式上場している株式会社の経営に大きな影響
力を持つ,個人および法人株主の上位10社大株主データを,1950年?2010年まで
ネットワーク分析し,株主の所有構造がどのように変遷して来たかについて明ら
かにする.その結果,近年では旧財閥系の金融機関の所有割合が相対的に減少
し,真の所有者が見えにくい信託銀行等のカストディアン(Custodian Bank)の所
有割合が増えてきたことを明らかにした.また,これらの非上場の信託銀行等の
持ち株会社を探ると,金融機関を中心とする,大企業が大株主となっていた.
信託銀行等のカストディアンは顧客から集めた大量の資金をもとに,株式市場に
おけるプレーヤーとして,今後市場に対して非常に大きな影響力を持ちうるもの
と考えられる.なお,本稿ではネットワーク分析及び可視化に際して
は,Cytoscapeを用いている.
- O4-4:小川祐樹(電気通信大学), 山本仁志, 和崎宏, 後藤真太郎
- 題目:災害時における地域SNSの活用:コミュニケーションネットワークの推移による分析
- 概要:地域SNSは地域コミュニティの活性化に期待が集まっているが、災害時などの緊急事態に対応するためのネットワーク基盤としても重要な
役割を果たす。
SNSのネットワーク構造やコミュニケーション構造の特徴分析は多くの研究でなされているが、災害時の情報共有や復興支援にSNSのどのようなコミュニ
ケーションがなされ、活用されたのかの分析はなされていない。我々は、作用町において発生した大規模水害にSNSがどのような使われ方をしたのか、SNS
上のネットワーク分析をおこなうことで明らかにする。本発表では、災害発生以前のコミュニケーション構造と災害発生時のコミュニケーション構造の変化に着
目し、中心的ユーザの果たした役割や日常のどのようなコミュニケーションが災害時に活躍したのかを明らかにする。
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