親子でインターネットを楽しむために
このページは,上原が国立第一小学校で2004年7月20日に講演した内容を補足するために作りました.
最近よく話題となる,子供のインターネット使用について,
親が最低限知っておいた方がよいと思われることを概観するのが目的です.
以前,大学生向けに作ったインターネット上の護身術
というページを,特に「子供を持つ親」のために作り直しました.
インターネットは非常に便利ですが,その反面,危険もあります.
残念ながら単なる倫理や常識だけでは対抗できない場合もあります.
必要なところはしっかりと理論武装しましょう.
内容は以下の通りです.
インターネットとは,もともと ``Inter''+``Net'' で,
『相互に接続』された『ネットワーク』を意味します。
私たちは『すでにインターネットに接続されているネットワーク』を探して,
そこに接続するだけでインターネットに接続することができます.
例えば
- 上原が自宅のパソコンを,プロバイダ経由でインターネットに接続
- ある学校が,近所のすでにインターネットに接続している学校に接続
といった,ごく局所的な合意と接続だけで,世界中のネットワークと相互に接続されるわけです.
こうした原理ですから,
- 全体の管理者といったものは存在しない.
- どこにどんな組織がつながっているか,全体像は不明
- どこで誰が何をやっているか,不明
- 常に変化する
という性質があります.また今現在では,
- 世界中の人が,国境を越えて,老若男女を問わず多数利用している
ということが確実に言えます.
インターネットそのものは,巨大なネットワークで,情報を運ぶ媒体にすぎません.
その上で利用する機能を『サービス』と言います.例えば電子メールは,代表的なサービスです.
電話に例えれば,電話線が媒体で,電話という機能や,Faxという機能がその上のサービス,
ということになります.
インターネット上には数万にもおよぶ,さまざまなサービスがありますが,
ここでは電子メールと WWW に限定して話をします.
WWWとは,いわゆるホームページと呼ばれることもありますが,
本名は World Wide Web といいます.Webとは「クモの巣」という意味です.
つまり世界中にはりめぐらされたクモの巣,という意味です.
WWWはもともと公開文書を互いに参照,閲覧できるようにするために
1990年代初頭に開発されたサービスです.WWWは
- ハイパーリンク(他の文書を参照するしくみ)を実現
- ネットワークを利用して,遠方の文書を参照できる
- 誰でも文書を公開する/閲覧することができる
- 文書だけではなく,マルチメディアに対応していた
ことから,1990年代後半に爆発的に普及しました.
現在では最も広く使われているサービスと言えるでしょう.
まず,インターネットには良い点がたくさんあることを理解して下さい.
上原が考える良い特徴は,以下の7点です.
- ボランティア精神
- そもそもインターネットは,たくさんのボランティアに支えられてできあがったものです.
基幹技術のほとんどは無償で作成され,配布され,利用されて発展してきました.
これがインターネットの最大の特徴と言えるでしょう.
- 充実した内容
- 今では非常に多くの有用な情報がインターネット上で手に入れることができます.
例えば青空文庫では,
著作権の切れた作家の文学作品をボランティアの人たちが入力して,
公開しています.驚くべき量の文学作品が公開されています.
- 年齢,性別,国籍を問わない平等性
- インターネットには国境もほとんど意味がありません.もちろん性別や年齢も関係ありません.
老若男女を問わず,コミュニケーションがとれる世界です.
- 即時性
- インターネット上の情報の流通は非常に速いです.
テレビや新聞などのマスコミの情報よりも速い場合も珍しくありません.
- 場所を問わない
- 物理的な「場所」による違いはほとんど関係ありません.
地球の裏側の人とも,瞬時にメールをやりとりできます.
- 直接コミュニケートできる
- 非常に有名な人と直接メールをやりとりできる場合もあります.
また生産者から直接ものを購入できる,という場合もあります.
こうした直接性も今後は重要な特徴になっていくでしょう.
ただし,最近は1日に1000通単位のメールをもらう人もいる,ということは覚えておきましょう.
あまりにも大量のメールをもらうことに,うんざりしている人もいます.
- マシンの能力をそれほど問わない
- インターネットは特定の企業が作ったものではないので,マシンの能力が貧弱であっても
利用することができます.例えば携帯電話のiモードなども立派なインターネット上のサービスです.
残念ながら,最近は悪い点が取りざたされることも多くなりました.
上原が考える悪い特徴は,以下の4点です.
- 匿名性
- インターネット上の情報は匿名で流される場合もあります.
最近では匿名の掲示板といえば2ちゃんねるが
やり玉にあげられることが多いのですが,これだけが匿名の掲示板,というわけではありません.
匿名性はときに無責任につながることがあります.
間違った情報や,悪意に満ちた情報が意図的に流される場合もあります.
一度流された情報を,インターネット上から完全に削除するのは,
現在ではほとんど不可能と言ってもいいと思います.
- 場所を問わない
- 良い特徴でもありますが,悪い特徴でもあるでしょう.
私たちが無意識に仮定する『日本の治安の良さ』は,まったく通用しません.
日本の法律では不適切であったり,日本のマスコミなら絶対に流さない映像なども,
その気で探せばいくらでも見つけることができます.
- 即時性
- これも良い特徴でも悪い特徴でもある,と言えるでしょう.
1990年代後半あたりから,フレーム(flame;炎)という言葉が新しい意味で
使われるようになっています.これはメールや掲示板など,
即時性のあるコミュニケーションツールで,双方が冷静さをなくしてしまって,
激しくとめどない「口げんか」のような状態になってしまうことを指します.
特にネットワーク上でのみの知人の場合だと,他に手段がない場合があるので,
やっかいです.
- マシンの能力をそれほど問わない
- 最近は携帯電話の能力が上がっています.携帯電話を狙いうちにする
ウィルスなども,それほど遠くない将来に必ず出現します.
『私はパソコンは使ってないから…』と言って安心していられるのも,
おそらくは今のうちだけです.
ではいったい,コンピュータの専門家ではない親が,個人でできること,とは何でしょう.
基本的には
- 子供向けの情報を親が厳選して与えること
- 入ってくる情報を制限すること
- 出ていく情報を制限すること
- コンピュータの管理
という4点に絞ることができるでしょう.以下で,この4点を詳しくみます.
子供向けの情報を親が選ぶこと
最近は子供向けを銘打ったWebページもたくさんあります.
上原が探した範囲では,以下のものが便利そうです.
こうした検索エンジンなどで例えば「子供向け」といったキーワードで検索すれば,
といったサイトをたくさん見つけることができます.
入ってくる情報を制限すること
最近はフィルタリングソフトと呼ばれるものがあります.これは次の2つを実現するソフトです.
- 届けられるメールの中から,不要なメールを見つけて,届く前に捨てる
- WWWページの閲覧を制限する
市販,あるいはフリーのフィルタリングソフトについては
財団法人ニューメディア開発協会の
フィルタリング情報ページ
を参照して下さい.これらの機能は基本的には同じ原理に基づいています.具体的には
- メールやWWWのページの中に「不適切な語句」が含まれていたら,その情報は「有害」と判断する.
- 「特定の相手」からの情報は「有害」と判断する
という処理を自動的に行なうソフトです.これはある程度「有害」な情報を排除することに役立ちます.
しかしここで強調したいのは,
こうした自動処理は完璧ではありえない
という事実です.ソフトウエアでどんなに上手に「不適切な語句」や「特定の相手」を登録しても,
相手は(時には悪意を持った)人間なので,必ず裏をかく方法を考え出します.
また,こうした「不適切な語句」を排除する規則を強くすると,こうした「不適切な語句」そのものを
メールで議論する,などといった,通常の使用に支障がでます.
ですから,現実問題としては,この問題は「いたちごっこ」になっていて,
本質的な解決にはなっていません.
つまりこの方法は以下の2つの問題を抱えています.
- 親がパソコンにフィルタリングソフトを入れたから,といって,
子供を有害な情報から「完璧に」遠ざけることは不可能.
したがって『フィルタリングソフトを入れたから大丈夫』と安心して,
あとは放置しておけばいい,というものではない.
随時「いたちごっこ」を追いかけることからは逃れられない.
- 「有害」を判定する基準を厳しくしすぎると,必要なメールまですてられることがある.
そして上原は,この問題は本質的に解決することはできないと思っています.
出ていく情報を制限すること
外部に情報を発信する際には,特に犯罪に加担する危険性に対する注意が必要です.
電子メールで特に問題になるのは,多量のメールをばらまく行為です.
これはネズミ講やチェーンメールといった種類があります.
ネズミ講やチェーンメールの詳細については
上原が別に作ったインターネット上の護身術の中の「メール」
のところを参照して下さい.WWWで問題になるのは,以下の点です.
- 著作権の侵害
- 掲示版の匿名性による誹謗中傷
- 個人情報の流出
著作権の詳細については,
上原が別に作った
インターネット上の護身術の中の「知的財産権」を参照して下さい.
掲示版にせよメールにせよWWWにせよ,
掲示版の使い方には十分な注意が必要ですが,
特に個人情報の扱いには十分な注意が必要です.
個人情報は気軽に教えない
ことだけはきちんと教えておいた方がよいです.
一度漏れ出して流通した情報は,完全に消去するのはほとんど不可能です.
コンピュータの管理
ネットワークに接続されたコンピュータは,絶えず攻撃の危険にさらされています.
特にウィルスに感染すると,マシンが壊れたり,他のマシンにウィルスをばらまく温床になったりします.
ウィルスの被害を防ぐには,以下の二つの対処が有効です.
- プロバイダなど,メールを中継してくれるところでウィルス除去してもらう
- パソコンにワクチンソフトを入れる
特に Windows 系の OS ではウィルス対策を何もしない,というのは極めて危険です.
何らかの対策を講じておきましょう.併用するとなお効果が高いです.
コンピュータの世界は日進月歩です.それは良くも悪くもです.
『悪意に基づいた行為』も日進月歩で進歩しているので,このあたりは
「いたちごっこ」になっているのが現状です.
これは親だけ,あるいは子供だけ,で解決できる問題ではありません.
親子ともども,ある程度はコンピュータについて学んで,
ともに身を守ることを考えるしかない,と上原は考えています.
そうしたきっかけになりそうなリンクを最後にまとめておきます.
- 上原が作ったインターネット上の護身術
- このページの元になったページです.メール関係やWeb関係,
本人が使う場合に気をつけないといけないこと,などがまとめてあります.
-
インターネットを利用する方のためのルール & マナー集
- 電子ネットワーク協議会のまとめた
マナー集です.内容は全般にわたります.
- ネチケット情報
- ネチケット(Network+Etiquette)に関するページの中では,おそらく最も有名なページです.
- 変なメールを受け取ったら
- いろいろな悪意のあるメールについて,分類・整理してあるページ.
充実していると思います.
- 新旧デマウィルス考
- 変なメールの筆頭である,チェーンメールなどの
デマメールについて分類・整理してあるページです.
- 経済産業省による特定商取引に関する法律施行規則の改正
- この改正により,しつこいメールも相手が国内業者の場合であれば,やめさせることができます.
業者に対する罰則規定も盛り込まれているので,適切にこちらが行動すれば,効果はあると思います.
なお,実際に広告メールを止めて欲しい場合に具体的にどうすればよいのか,
と言う点は必ず
特定商取引に関する法律施行規則の改正を確認して行なうようにして下さい.
なお,海外からのメールに対しては,今はこちらが『無視する』以上の
有効な手立てはないです.
- ネットワーク利用の悪質商法にご注意!!
- 警視庁がまとめた,ネズミ講をはじめとする,ネットワークを利用した悪質商法に
関するページです.当然ですが,法的な内容などが信頼できます.
- 生活安全の確保と
ハイテク犯罪対策
- こちらは警察庁がまとめたものです.
これら以外にも警察庁のページからたどると,
いろいろと法的な問題に関する情報が得られます.
- 悪徳商法マニアックス
- ネットワーク関連だけではありませんが,悪徳商法をやっていると思われる会社を
まとめたサイトです.個人がやっているサイトなので,
最終的な真偽は自分で判断するしかないですが,目安にはなります.
- 情報処理振興事業協会
- ウィルス情報などセキュリティ関連の情報
- 社団法人著作権情報センター
- 著作件関連の情報
- ハイテク事件簿
- 実際の犯罪事件の記録です.
愛知県警察のページの
ハイテク犯罪対策室
のページです.
- フィルタリング情報ページ
-
財団法人ニューメディア開発協会がまとめている
フィルタリングソフト全般に関するページです.市販の製品の紹介もあれば,
この協会が提供している無償のソフトもあります.